※若干注意






目が覚めると、中途半端に開いたカーテンの隙間から日光が射していてその眩しさに思わず目を細める。
ごろんと向きを変えるとすぐそこに公平がいた。くうくうと小さな寝息を立てているその姿を見て一瞬思考が停止したもののすぐに昨晩の行為を思い出してしまって、今度は急激にわたしの心臓の音がうるさく響き始める。寝起きは良くないはずだけどそれどころではない。公平に触れられた温もりとか、痛みとか快楽とか。いろいろ思い出してしまって無理、無理だ。恥ずかしい。

「ん、……」

彼が掠れた唸り声をあげてもぞもぞと動き出した。たぶん、起きる。
そこでふとお互い衣服をなにも身につけていないことに気付いて、わたしは近くに落ちていたワイシャツを拾って急いで羽織った。

「なまえ……はよ」
「お、おはようございます…」

なんで敬語なんだよ、なんて。寝起きの声は初めて聞いたけれど、なんというかすごく色っぽくて わたしはなにも言い返せなかった。

「ねえこうへい、はやく服、着て」
「無理」
「無理って…あのね、目のやり場が」
「だっておれの服なまえが着てるじゃん」

彼はちょっと意地悪そうに言った。わたしはあっ、とかえっ?とかそんな言葉しか出てこなかった。確かにわたしがさっき拾い上げたワイシャツは、公平のものだった。特に意識していなかったし、近くに落ちていたのがこれだったのだ。ところでわたしの下着やら服はどこへ行ったのだろうと辺りを見回すと、枕元の近くに丁寧に畳まれて置いてあった。むかつくくらい几帳面で気遣い上手な彼らしい。

「なんかごめん」
「良いって。かわいい彼女が自分の服着てたら誰だって嬉しいだろ。あれだ、彼シャツってやつ」
「うーん…」
「つーかさっきから何で目合わせてくんないの」

公平は寝っ転がったままで肩肘で頭を支えながらこっちを見ているのが視界の片端に見える。
さっきから彼の顔をまともに見れないのだ。だって、昨日の今日だし、色々思い出してしまうのも無理はないはずだ。彼の前で裸になって、泣いて喘いで欲して。そんなものを晒してしまったという事実がチキンなわたしには耐えられない。

「今日1日顔を合わせられる気がしない 恥ずかしくてしぬ」
「なんだそれ。やだ」
「わたしもヤダ」
「別に恥ずかしがることないだろ。あんなに可愛かったのに」
「そーいうのがやなの!」
「耳真っ赤」

毛布に熱くなった顔を埋めようとしたら公平に取り上げられてしまった。意地悪。察してよ。

「なまえ、こっちむいて」
「無理」
「じゃあ強引にでも向かせる」
「ひっ、…もう!!」

強く腕を引っ張られて、強制的に彼と向き合う体制になる。観念して目を向けると 今朝初めて見る彼の前髪ひと束が明後日の方向へはねていて思わず吹き出してしまった。ハァ?なんて言って不機嫌な顔をしていたから 手櫛で前髪を直してあげた。
そして、今度こそちゃんと向き合う。

「じゃあ改めて、なまえちゃんおはようございます」
「……おはようございます」
「よし、そんじゃあ適当に朝飯用意してくっからなまえは着替えてて」

満足そうに言って公平はそそくさと部屋を出て行ってしまった。
わたしも我に返って この火照った顔をなんとかしようと、速攻で着替えて洗面所へ向かった。


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