甘えられるより甘える方が好きだし、頼られるより頼る方が好き。面倒はかけるよりかけられたい派だ。
つまるところわたしは我儘な方だと思う。
でも悠一くんは、そんなわたしの我儘をなんでも受け入れてくれた。それは嬉しいようで、申し訳ない気持ちの方が大きくなってしまう。それでもわたしは、そんな悠一くんの優しさに今日も甘えてしまうのだ。




もうすぐ日を跨ぐだろうという時間。悠一くんはぼんち揚げを片手にわたしの家にやって来た。毎回こんなだから慣れてしまったけれど、来る前に連絡くらいしてほしい。部屋の掃除だってしておきたいし、せっかくなら食に関して不摂生な彼のために料理だって振る舞ってあげたい。
と言いつつも実際のところは、わたしのコートとかヘアアイロンなんかがそこらに落ちている部屋のソファに2人並んで、レンジでチンしたお餅(これは太刀川さんからのお裾分けだ)を食べているわけだけど。

「なんでいつも突然来るの」
「おれ なまえが驚いた顔好きだからさ」

思わず大きなため息が出る。そんな理由?と抗議すれば、おまえはそうやって怒るところも可愛いな〜なんて言ってわたしの頭をわしゃわしゃと撫でる。わたしは犬でもなければ猫でもない。あなたの立派な恋人ですよと言ってやりたいけれど、それじゃあ完全に彼のペースに乗せられてしまうようで悔しい。わたしは少し考えてから食べ終えたお皿をテーブルに置いて、隣に座る悠一くんに凭れかかってみる。彼はとっくにお餅を食べ終えていたようだ。

「どうしたなまえ、もう眠い?」
「別に」
「困ったな。さすがのおれでも言葉にしてくれなきゃ何にもわからない」
「それはわたしも同じだよ。悠一くんはいつも何かあった時とか、不安な時にここに来るんでしょう?太刀川さんに聞いた。なんでそういう事はなにも言ってくれないの」
「…参ったなあ」

悠一くんはちょっと驚いたような顔をして頭を掻いた。きっと彼が見ていたであろう未来とは違うものになったからだ。
一度体勢を正して深くソファに座る。そして、悠一くんの肩を引っ張って、強引にわたしの太ももの上へ倒す。所謂 膝枕だ。

「ちょっと、どういうこと」
「いつも甘えさせてくれるからお返し。今日だけの特別サービスだよ」
「そりゃ嬉しいけど おれ寝ちゃいそう」
「いいよ。今日はわたしが悠一くんの事 甘やかしてあげる」

それから彼のちょっとはねた髪をゆっくり撫でていると、数分で彼はすぐに眠ってしまった。毎日ボーダーに関する仕事ばかりで心身ともに疲れているんだろう。
いつもお疲れさま、頑張るのはいいけど無理しないでね。
眠る彼にわたしはそっと囁いた。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -