カゲの手が好きだ。
男の人にしては細くて長い指は女のわたしからしても羨ましいくらいだけど、ほんの少し骨ばっていて大きなその手は やっぱり男の人のそれだ。

わたしのマンションのリビングで堂々とリラックスしているカゲは、ソファにだらしなく座ってテレビを見ている。わたしも最初は隣に座ってぼんやりとテレビを見ていたけれど、ふと隣に置かれている手に目がいってしまってからは、じっと観察するようにそっちを見ていた。

「…くすぐってえ」
「手でもサイドエフェクトって感じるの?」
「みてーだな」

ふうん。まあだからってやめないし彼もそれ以上何も言ってこなかったから良しと判断した。

「触っていい?」
「変なことすんなよ」

いつものカゲだったら絶対に嫌がると思ったけれど、意外だ。
わたしはソファに放り出されたその手を掬うと、自分の手のひらと合わせてみたり、軽く絡ませてみたり。彼の手は少し冷たかった。



夢中になっていたら番組が終わったらしい。カゲはわたしが弄っていたのと反対の手でリモコンを操作し、テレビは途端に静かになった。部屋が急にしんと静まり返って、なんだかちょっぴり寂しい気持ちになってくる。

「なまえ」

わたしの手からカゲの手がするりと抜けて、そのままわたしの頬に添えられる。やっぱり冷たい。心が優しいからだねなんて言ったら、彼は嫌な顔するだろうなあ。
指で唇をゆっくりとなぞられて、少しだけこの先を期待してしまう。

「気い抜けた顔してんぞ」
「誰のせいだと思ってるの」

カゲの腕がわたしの頭の後ろに回って、気付いたら固定されていた。頭の中はすでにぼんやりしていてキスされるかなあと他人事のように思った。

「カゲの手好きだよ」
「そうかよ」
「あ、でも手だけじゃないからね。髪も目も口も、あとは」
「黙っとけ」

耳を赤くしたカゲがやっぱりキスをしてきた。触れるだけだけど長い長いキスに、わたしは考えることをやめて身を任せてしまうことにしよう。


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