昔から幼馴染みの徹くんと一くんを真似てバレーボールチームに入っていたわたしは平均的な女子に比べて運動はできる方だし、髪もずっとショートヘアーで私服は毎日ズボンだったから 小学生の頃は男の子みたいって言われることが多かった。
中学生になってからは制服でスカートを履くようになったものの相変わらずギリギリ肩に届くくらいのショートヘアーで、バレーボールも続けていた。やっぱりここでもなまえちゃんは運動もできてかっこいいね!と言われた。


中学3年生でバレー部を引退したあと、今まで伸ばしたことのなかった髪を伸ばすことを決めた。
いくら足が速くたって、握力が強くたって、わたしは女の子に見られたかった。わたしだってピンク色が似合うようになりたいし、フリルのワンピースだって着たい。何より 好きな人に少しでも可愛いって思ってもらいたい。

クラスが違った徹くん達とわたしは、部活を引退してからというもののほとんど顔を合わせなくなった。考えてみれば向こうにとってはわたしなんてただの幼馴染みでしかないのだから当たり前なのかもしれない。


風の噂で徹くんは青葉城西を受験すると聞いた。きっと一くんも一緒だ。
またわたしが同じ学校だったら不自然かな…。迷惑じゃないかな…。小学校からの付き合いである親友にそれを打ち明けたら「高校デビューってよく言うでしょ?なまえはじゅーぶん可愛いし、ギャフンと言わせてやんなよ」と言ってくれた。彼女の言葉がわたしの決意に繋がった。




結局卒業まで徹くんと顔を合わせることはなかった。卒業アルバムに写るわたしはまだショートヘアーの頃だったけど、今では胸くらいまでに伸びていた。まるで別人みたいね、とお母さんにも言われた。



4月、わたしは無事に青葉城西高校へ入学した。そしてあろうことかわたしは徹くんと一くんと同じクラスになってしまった。嬉しいけど、なんだか怖い。
張り出されたクラス表を確認し終えたわたしは人ごみから抜けようと振り返ると、そこにはわたしの脳内を占めていた彼がいた。

「とおる、くん…」
「……なまえ??」

徹くんは大層驚いているみたいだった。それはわたしがここに居ることに対してだろうか。それとも徹くんの知っているわたしとはまるっきり変わったわたしがそこに居たからだろうか。



「びっくりしたよ。まさかなまえが同じ高校だなんて」
「しかも同じクラスなんてな。まあ俺にとってはクズ及川とまた同じクラスっつーのが解せないけどな」
「酷い岩ちゃん!!」



今日は入学式とクラス発表で終わった。帰り道は徹くんと一くんと久しぶりに喋りながら歩いた。なんとなく二人は大人っぽくなった気がする。そう言ったら二人はわたしの方が大人っぽくなったって笑って言ったけど。


「んじゃ、俺こっちだから」
「バイバイ一くん」
「またね〜岩ちゃん」
「及川おめぇはちゃんとなまえのこと送ってやれよ」
「わかってるって」


一くんは笑顔の徹くんに舌打ちをしてから去って行った。さて どうしたものか。徹くんと二人っきりになるのが久しぶりすぎてなにを話せばいいのかわからない。

「えっと、徹くん。まだ明るいしわたし一人で帰れるから、」
「いーのいーの。俺がなまえちゃんと少しでも長くいたいから、送らせて?」

さすがというか何というか。女の子がキュンとする言葉をいとも簡単に口にしてしまう彼に、現にキュンとしている自分がいた。

「なまえちゃん髪伸びたね?サラサラで綺麗だ」
「あり、がとう…」
「すっかり色気付いちゃって、最初誰だかわからなかったよ」
「そうかな、」
「うん。でもまあ本当は、なまえちゃんがココの学校を選んだのは知ってたから」
「……え??」

わたしの歩幅に合わせて隣を歩いていた徹くんが足を止めた。
わたしもつられて足を止めて徹くんの方を見るとそこには真剣な顔つきの徹くんがいた。

「俺さ、中学で部活引退してからずっとなまえちゃんのこと目で追ってた。それまでのなまえちゃんも好きだったけど、どんどん可愛くなっていっちゃうからさ、心配だった。誰かにとられないかなって」
「徹くん…?」
「でももう目で追うだけじゃ満足できない。さっきだってなまえちゃんのこと見てる男子、たくさんいたしね」

おもむろにわたしの両手を掴むとぎゅっと握りしめた。

「俺、ずっとなまえちゃんが好きだった。なまえちゃんが誰かのものになっちゃったら、気が狂いそう」

「俺のそばにいてください」

懇願するような彼の表情は初めて見た。わたしは握られた手を強く握り返して長年の想いを徹くんに伝えることにした。


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