4.食べちゃうぞが冗談に聞こえません

あの後私は自宅に帰ることもなくとあるところに居ます。どこかって?クロロさんの家です。はい、あのクロロさんです。私が一番驚いてます。理由は遡ること1時間、相合傘なんてものをしていたわけだけど横殴りの暴風雨に見舞われて結局二人とも頭の先から足の先までびしょ濡れになってしまった。私は交通機関を利用しなければ家に帰れないんだけども、クロロさんに「そんなびしょ濡れで歩き回るくらいなら俺の家に来い」なんて言われてしまったのだ。聞けば歩いて何分か程度のところにあるマンションに住んでいるらしく、抗議の声を上げる間もなく着いてしまった。

『うぅ…何してるんだろう私、なんでクロロさんの家に…』

「とりあえず温まってこい」と言われてお風呂場に放置された。「着替えは後で置いておく」って?そんな、なんかもう恥ずかしいっていうか緊張するっていうか…っ!ちょっと意識し始めるとすごい乙女チックな思考になってくる…。自分で自分が恥ずかしいわ。と、とりあずクロロさんも寒いだろうしさっさと温まって上がってしまわねば。

『ふぅ、クロロさん。お風呂有難うございました!』

「あぁ。ちゃんと温まったか?…少し、いやだいぶ大きいな」

顎に手を当てて少し考えるような顔をしたクロロさん。何やら「これがシャルの言っていたことか…。なかなか…」とかいってるけど何を考えてるんだろうか。

用意してもらった着替えはおそらくクロロさんの服。だってサイズが男の人のものだしなによりクロロさんのにおいがする。やばい、私変態くさい。クロロさんの事変態とか言えない。でも安心するいい匂い。

太腿ほどの長さのTシャツ(私が着ると)にパーカーはクロロさんに借りたもので、ショートパンツは今日私が買ったものだ。流石にクロロさんのズボンは履くとずり落ちたから履かなかった。

『そんなことより、クロロさんもお風呂入ってきてくださいよ!クロロさんが風邪ひいちゃいますよ』

「俺は風邪をひくような人間じゃない。まぁでも入ってくるよ。濡れたままっていうのは気の良いものではないしな」

クローゼットから適当に服を持って行ったクロロさんを見送ってリビングのソファで紅茶を飲む。ストレートの紅茶を飲んでいると甘いものが食べたくなるなぁ…。おなか減ったきたかも。ってもう7時過ぎか!いつもはもう食べてるかどうか位の時間なんだけどクロロさんはどうなんだろうか…。クロロさんてあんまり生活感しないかも。

ぱちっと目を開けてぼやぼやした頭で考える。気が付くとどうやら少し眠ってしまっていたみたいだ。ソファの隣にはいつの間に風呂から上がったのかクロロさんが座って本を読んでいた。睫毛長い、綺麗な顔…。ここまで考えて私はクロロさんの肩にもたれかかっているという事実に気が付き慌てて飛び起きた。

『す、すいませんクロロさん!』

「うん?気にするな。それと寝顔可愛かったぞ」

そういうクロロさんの左手には本の代わりにカメラが。この人また盗撮したんだろうか…!たぶん、いや絶対した。以前とはまた違った恥ずかしさがこみあげてくるからやめて欲しい。たぶん今の私の顔は真っ赤だろう。大人っぽくて紳士なクロロさんだと思った次の瞬間にはこんな茶目っ気のあるような顔で笑いかけてくるのだ。そのギャップに弱い。変態と罵っていた割にずいぶんと彼のことが好きなようだ。

「その顔もなかなかにそそるな…」

え?とか思っている間にクロロさんは私の方にじりじりと迫ってくる。ソファの端の方に逃げつつ、正直パニック状態だけどなんとか平常心を保とうと頑張る。不意にクロロさんが手を伸ばしてそっと耳の近くに顔を寄せる。

「そんな顔してると食べちゃうぞ」

低い掠れたような声で囁かれた台詞は私の羞恥心をあおるのには十分すぎた。今まで以上の熱が顔に集まりう、とかあ、変なうめき声しか出せない。

『へ、変な冗談はやめてくださいっ!』

そう言ってなんとか彼とソファあの間から抜け出した。今日のクロロさんはなんだか変態要素が少ないから無駄にかっこよく見て心臓に悪い。当の本人は相変わらず楽しそうに笑っているから少しだけ悔しい。


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