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「#エロ」のBL小説を読む
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新たな時間のために

“家族”が次々と破壊されていく様を、オレはモニターを通して眺めていた。
コアの異常な高鳴りが、全身にひしひしと伝わるのを感じる。
その高鳴りは、怒り以外のなにものでもなかった。
家族を破壊していくのは、長男であるアイツと瓜二つな姿をしている。
それもそのはず、ソイツは長男の“オリジナル”であるからだ。
オレ達は所詮“コピー”にすぎねえ。
だがそんなことはいい。
コピーだろうと、アイツに勝てないと決まったわけじゃない。
アイツにオレは、絶対負けない。
ワイリー様のために、オレは絶対勝つ。

――いや、それだけじゃない。
“アイツ”のために、オレは負ける訳にはいかねえんだよ。

「おい時、つぎはオマエのところにくるつもりだぞ」

ふと、背後から聞こえた一体のロボットの声。
ソイツも、家族の一体。
その声を聞いただけで、コアの高鳴りが若干収まるのをオレは確かに感じていた。

「らしいな?イノチしらずなヤツ」
「……ああ」

その声は、どんな時も聴覚機能が壊れるのではないかと思うくらい激しく勇ましい、そしてコアに響く声だ。
そんな声が、今は消えそうなくらいに小さい。
オレ達コピーが作られてそんなに日が経ったわけじゃない。
だがオレは、生み出された時からこの時までの時間で、ソイツに対してそう感じていた。

「なんだよ氷、まさかオレがマケルとおもってんのか?」
「は!?んなことボクはしらねえよ!」

ああ、そうだその声だ、オレが、聞きたかった声だ。
普段の声とは程遠いが、今はそれだけ聞ければ十分だ。
最後かもしれない、なんて柄にもないことをオレは思っているんだろうか。
そう思っているからこそ、それだけで十分だと思ってるんだろうか。

「ふ〜ん?…っと、そろそろいくか。アイツのジカンをエイエンにとめにな!」
「さっさといっちまえ!そんでオマエがぶっこわされろよ!ボクがアイツをたおしてワイリーさまにほめられるんだからな!」

氷のその言葉とは正反対に、オレの腕を掴むのは氷の手。
その名前とは正反対に、ソイツの手は温もりがあった――あったかかった。
同時に、寂しそうに見えた。

「ん〜?なんだよ氷、まさかオレにテガラをとられるのがイヤなのか?」
「……なんもシラネエくせに……」

チクショウ、これからって時にそんなカワイイ姿見せられたら。
――抱きしめたくなっちまうじゃねえかよ……。

「おい氷、つかまれたらオレうごけねえんだけど?」
「…ッ…バカやろう!!」

限界を感じた。
放そうした氷の腕を、オレは空いた手で引っ張って。
自信の胸に収めてやった。
氷は状況を理解していないらしい、まるで石像のように固まってやがる。
だがすぐ、理解したのか慌て始めて。
慌てる事も出来ないほどに、オレは強く、強く、抱き締めた。

「ばっ…オマッ…なんで、こんな…ッ」
「……なあ、氷」
「なんだよ時ッ…オマエどういうつもり…はなせ――」
「オレがアイツをぶっこわしてカエってきたら。オレとつきあえ」
「へっ……?」

慌てていた氷が途端に大人しくなった。
その一声が、またカワイイと思った。
いつの間にか、オレはコイツに――氷にムチュウになっていたらしい。

「キョヒケンはねえからな?ありがたくおもえよ?」
「……バカやろう」

オレのこの気持ちも知らねえで、そう口にしようとした時。
氷からの言葉で、オレはその言葉を取り消す事になった。

「さっきのなんもシラネエくせにってコトバ…とりけしてやるよ」
「は…?氷…?」
「……キョヒなんかしねえよ……」
「……!」

小さなその声、オレは確かに聞き取った。
しっかりと、その声をメモリに記憶した。
アイツにオレは負けねえけど、仮に壊れてもこの声だけは壊させやしねえ。

「…おい時!ぜってえかえってこいよ!?かえってこなかったらイッショウうらむからな!?」
「シンパイなんかすんなよ!オレはゼッタイあいつをぶっこわしてくるからよぉ!」
「しっ、シンパイなんかしてねえよ!」
「ははっ!」

その小さな体を更に強く抱き締めて。
そうしてオレは氷を解放してやる。
アイツをぶっ壊すために、オレは氷に悪党面を見せてやると、その場を後にした。

――オレはアイツに負けるわけにはいかない。
アイツをぶっ壊した後、オレの新たな時間が始まるんだからよ。

***

初、複時複氷小説でした…!
最初はやっぱり告白ネタを書きたくなってしまいます…´`* 2016/10/24
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