SEVEN

滝がおらん……。
俺は跡部の辞書片手にA組とB組の間をさ迷っていた。
授業も終わり、ちょうど昼休みになったと同時に教室を飛び出してきたのだが目的の人物である滝は何故か教室におらず、途方に暮れるしかなかった。

俺が跡部と二人きりで会う気まずさを知らんのか。

いない人間に言っても仕方がないが……。
早くしないと昼休みは終わってしまうし跡部も何処かに行ってしまうかもしれない。
「っよし、渡して帰ればええんや。それだけや」
自分に言い聞かせるように呟くと意を決してA組のドアを開けた。
昼休みということで人も疎らで、小さな集団を作って昼食を取っているのでさっきほど注目されることはなかった。
小さく息を吐くと目的の人物、跡部へと目をやる。
ちょうど教科書を机に直しているところで俺には気付いてないみたいだ。
ゆっくり一歩一歩、確実に近付くとあと1メートルというところで跡部はこっちを振り向いた。
「あ、」
まっすぐに碧眼で見詰められたじろぎそうになるも平静を保ってなるべく普段通りに話し掛ける。
「辞書、ありがとさん」
「ああ」
辞書を差し出すと跡部はそれを右手で受け取り、机に置いた。
……あとは返るだけや。
妙に緊張したが少しでも話せただけでも進歩したほうだ。
「ほな「忍足」
帰ろうと一歩下がると突然名前を呼ばれる。
「…なん?」
「お前、昼飯は?」
「えっと、まだ食べてへんけど…」
急いでここまで来たのだ。そんな時間は無かった。
跡部が何故そんなことを聞くのか分からない。
「……っと、何も無いなら戻るけど?」
無言の跡部に苦笑いしながら告げると、待てと止められる。

「飯、一緒に食わねぇか?」

一瞬。
自分の耳を疑った。


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