FIVE
「跡部、ちょっといい?」
滝が跡部に呼び掛けると先程まであった視線が無くなり、ざわざわと騒がしい教室に戻った。だけれども俺はそんなのは全く気にならなかった。
「萩之介と…忍足か。どうかしたか?」
教室の入口まで来ると跡部は滝と俺を見て尋ねた。
トン、と滝が跡部には分からないように肘で俺を突く。
「あ、と。辞書貸してくれへん…?」
「……萩之介に借りれば良いじゃねぇか」
「それが俺も忘れちゃって」
跡部から見えてないが、しっかりと滝の手には辞書が握られている。
「……待ってろ」
跡部は一瞬俺を見るとすぐに視線を外して机へと戻って行った。
――ほんま嫌われとるみたいや。
思わず零れた自嘲の笑みを滝に見られてるとは思わなかった。


(PREVNEXT)

戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -