人間静雄×死神臨也
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「―――こんばんは」



それは月明かりのない闇夜に一人ぽつんと佇み、俺の目の前に姿を現した。
紅い目を細め、楽しそうな声色で俺に声をかけるそいつはこの世のモノとは思えないほど綺麗な顔立ちをしていて身の毛が弥立つのを感じた。



「だ、れだ…手前、」

「ふふっ、どうしたの?……声、震えてる」

「っ!るせぇ…ッ!俺は誰だっつってんだ!」

「えー何でキレるの?コワいなぁ」



クスクスと喉を鳴らして笑うそいつは、ちっとも恐がっているようには見えない。寧ろ、情けないことに声を震わせている俺を見て楽しんでいる。
暗闇のせいで妙に映える白い指は歪んだ口元を覆い、そして指同様に白い自身の肌に這わす。たったそれだけの動作に俺の目は奪われ、既に目の前のそいつしか見えていない。

こんなアンバランスな奴は初めてだった。
闇に紛れる漆黒の髪を持つくせに、その肌は対照的に雪のように真っ白。唯一の色どりを飾るのは双眸に埋め込まれた深紅は薄暗い宵の中でも十分に目立つ。そして信じられないほどの端麗な容姿は、その三色を無駄にすることなく最大限に生かしている。有り得ないほどの均衡が保たれた、絶世美麗。

だからこそ、そいつはとんでもなくアンバランスなのだ。
この、俺達が生きるこの世界に、そいつの存在は釣り合ってなどいなかった。



「そんなに褒められると照れるね。まさか仏頂面の下でそんな口説き文句をつらつら言われてるなんて」

「な…ッ!?」

「しかも君は凄いね。何も分かっていない癖に、俺の存在がこの世界と不釣り合いだと無意識化に悟ってるんだもの。これって野生の勘って言うのかなぁ?何だっていいけど」



愕然とした。俺が心の中で唱えていた言葉全てが目の前のそいつには筒抜けだと言うことに驚きを隠せない。間違っても俺は一言たりとも言葉にして発した覚えはないし、そもそも思考の時間は短時間すぎて話している間もないほどだったはず。
それなのに奴は何事もないように平然と俺の心の内を暴いた。綺麗すぎる笑みを張りつけ、クスクスと喉を鳴らす。



「ああ、ごめんね?勝手に君の心の中を読んじゃって。でも仕方ないんだ、意識してないと勝手に聞こえてきちゃってね。俺もワザとしてるわけじゃないし許してよ」

「待てよ!俺の心読むって何だよ!?つか、手前は何なんだよ!」

「死神だよ」

「………はっ?」

「死を司る神、だから死神。どう?これで納得かな?」



―――平和島静雄クン、とそいつは名乗ってもいないのに俺の名前を紡いだ。
けれど俺には名乗ってもいない名前を知られていることよりも、そいつが言った言葉を受け入れる方が先だった。

死神?そんなものこの世にいるわけがないだろ。別に科学的に証明出来ねぇからとかそんな理由ではなく、ただ単に俺自身が見たことがない不確定な存在は信じれないと思っているからだ。
けれど目の前の男は自分を死神だと言う。確かに信じられないほど顔は整ってるし、それが妙に浮世離れしていてこの世界と不釣り合いだとも思った。だけどそれとこれとは違う。男はどんなに見た目が綺麗でも、姿は俺と同じ人間の形をしている。それが死神?やっぱり信じられない。


――――だけど、俺の心を当たり前に読んだことは何なんだ。
俺の名前を知っているのも、どういうことだ。

死神だから心が読めるのか?だったらこいつはやはり死神とかいうヤツなのか?
ああ、畜生。どういうことだよ、マジで。



「今は意識して君の心を読まないようにしてるけど、読まなくても分かるよ。大分混乱しているみたいだね」

「当たり前だろぉが!!いきなり現われた初対面の野郎に心読まれて、挙げ句には死神だとかカミングアウトされたらそりゃあ混乱もするだろうよっ!」

「えー?そんなもんなの?人間ってこんなことで驚くんだね」

「…こんなことじゃねぇよ……。大体、手前がもし死神だとしたら何の用で此処にいるんだよ…」

「あはは、変なこと聞くね。死神がいる理由なんて一つしかないだろ?」



勿論、君の魂を狩りに来たんだよ。


そう言った奴の顔には、出会って一番良い綺麗な笑みが浮かんでやがった。





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臨也の名前を出せなかった…。
そして死神設定をあまり生かしきれてないorz

けど、死神臨也って何だか萌えませんか?(自重)



 
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