『…新羅』

『なんだい、静雄君』

『……お前、いつから気付いてたんだ』



主語のない問いに僕は心から笑みが零れる。あの時は少しだけ意地悪なことを言ったかもしれないと反省したけど、どうやらその必要はなかったみたいだ。

彼の顔を見れば一目瞭然。僕の助言がきいたのかは分からないけど、無駄ではなかったのだと理解した。



『そんなことどうでもいいさ。それよりも静雄君、君はこれからどうする気だい?言っておくけど、臨也は君が思ってる以上に自分のことに関しては疎いよ』

『…俺はどうすればいい』

『それを僕に聞くかい…。まぁそうだね、とりあえず喧嘩は控えた方がいいよ。あとは君のしたいようにすればいいんじゃない?会話するもよし、一緒に下校するもよし、遊ぶのもよし。要は余計なことは考えず、君の思うままに行動すればいいってこと』

『そんなんでいいのか?』

『いいって、君はそのままで。あ、でも一つだけ言えるのは告白したいならしてしまった方がいいよ。さっきも言ったけど臨也は他人に関することは目敏いけど、自分に関することには疎い。だから君がいくら臨也を好きでも、言葉にしない限り臨也は気付きはしないよ。寧ろ、大人しい君を見たら頭が壊れたとか思いそうだから』

『…分かった。じゃあアイツにはそれとなく言う』

『うん。ま、頑張りなよ静雄君』



―――そう言ったのが多分、一週間ぐらい前。
確かに僕は相談してきた静雄君に対して、自分を意識させたいなら告白はするべきだと遠まわしにそう助言した。それは今でも間違いない的確な助言だと思う。

だけど静雄君。まさか僕は君が教室のど真ん中で、しかも臨也のクラスメイトがまだ沢山いるそこで威風堂々と告白するなんて思いもしなかったよ。君は色々な意味で予想と予測を気持ち良いぐらいに覆してくれるね。これは臨也が苦手意識を持つ理由も分からなくもない。
臨也は分からないことが嫌いだから、静雄君みたいな予測不可能な人物は苦手でしかないのだろう。現に静雄君に告白された彼は、それはもう今まで見たことのない間抜け面を晒す羽目になっている。流石だよ静雄君、きっと臨也にこんな顔させるのは未来永劫君だけだ。



「臨也、大丈夫?」

「あ?具合でも悪ィのかよ、ノミ蟲」

「んーちょっと静雄君は黙っててあげようか。臨也がこうなった原因は十中八九君だから」

「はぁ?何でだよ」

「…そこで何でだよって返す君は、本当に馬鹿だね。シズちゃんマジで死ねよ」

「まぁ落ち着け臨也。混乱する気持ちも分かるが、今はとりあえず一旦教室から出ねぇか?お前も視線の的にはなりたくないだろ?」

「ドタチン…好き!」

「ありがとよ。……ところで静雄、お前が今手に持ってる机は何だ?」

「ああ……つい無意識のうち手前を殺したくなった。気にするな」

「シズちゃん、ドタチンに何かしてみろよ。いくら温厚な俺でも怒るから」

「何で手前、門田の肩ばっか持つんだよ。ぶっ殺すぞ、ノミ蟲野郎」

「それは俺がドタチン、ラブ!だから。そして仮にも好きだって告白した相手にぶっ殺すはないんじゃない?デリカシーの欠片もないね」

「だからこの一週間はなるべく手前を殺さねぇように我慢してやっただろ。けど、告白してスッキリしたら手前をまた殺したくなった。つーことで門田から離れろ、殺したくなる」



わぁ、それはどんな思考回路なんだい静雄君。ほんと仮にも好きな子相手に、告白したら殺したくなったって意味不明だよ。まぁ静雄君のそれは主に門田君に対する嫉妬心から湧き上がってきた殺意なんだろうけど。でも、いくら嫉妬してるからって殺すはないよ。しかもよりにもよって臨也が唯一と言ってもいいほど懐いている門田君相手に殺すはタブーだ。

あ、門田君笑ってる。きっと静雄君の分かりやすい嫉妬心が肝心の臨也にはいまいち伝わってなくて笑ってるんだろう。
最近思うけど、門田君って自分のそのポジションを上手い具合にフル活用して満喫してるよね。そして日頃の苦労の仕返しなのか何なのか、結構この空気を楽しんでる。



「(ま、僕もだけど)」



そう心中で呟いて笑った僕は、人のこと言えないけどね。





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閑話みたいな話。
新羅視点をお送りしてみましたw

彼は本当にいい働きをしてくれます。
流石はセルティの旦那!!←



 

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