十四

ナマエの背に手を回し、山崎は彼女の帯を解こうとした。

『…っ』

が、きっちりと固く締められた帯は中々解けない。
前に鈴代の帯を解いた時は片手で外せる程緩かったというのに。

山崎が帯解きに難儀している事を知り、ナマエは少し身を引いた。
自分の不器用さに嫌気が差し、山崎は表情に落胆の色を滲ませた。
そんな彼の両手をとって、何て事は無いという様にナマエは笑んで見せた。

『申し訳ございません、久々の女帯でしたから、つい気合いを入れ過ぎました』

そう言ってくるりと山崎に背を向け、ナマエは自分で帯を解き出した。

『…』

久々という割に手慣れた手つきであるのは、やはり女子だからだろう。
山崎は職人の様なナマエの手捌きを放心して見入った。

しゅるり、という、紐状の物が衣を擦って滑っていく音が妙になまめかしく聞こえる。
山崎の鼓動は期待感で早まった。

解いた帯を傍らに置く。
ナマエは伊達締めや腰紐も続けて解き、それらもまた傍らに置いた。

背を向けているので山崎には見えないが、前がはだけた。
今日はいつもの様にさらしを巻いていない為、胸や腹に直接空気が触れる。

『…』

少し後ろを振り返りつつ、ナマエは襟元に手をやった。
山崎が瞬きを一つ二つする。
ナマエは言葉を発する事なく着物を肩から滑らせ、焦らす様に誘う様にその肌を露にした。

『…っ!』

当てられた山崎は彼女の背に飛び付き、その身体を後ろから抱いた。
手を彼女の腹に回し、その素肌を愛撫する。
ん、という声と共にくすぐったさでナマエが小さく跳ねた。

白い項に鼻を寄せると山崎だけを甘く誘う女の香りがする。
本能のままに唇で触れると、ナマエは震える息を短く吐いて跳ねる様に上体を反らせた。

肩に掛かる衣をゆっくりと剥ぎながら、それを追う様に唇を滑らせてゆく。
ナマエは山崎の膝の辺りに手を添え、彼の袴を握り締めた。

押し寄せる快感を目を閉じて全身で味わう。
彼女の口から時々零れる控え目な嬌声が山崎の耳に届くと、彼の熱は段々と昂ぶっていった。

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