『何時までそうして突っ立っているつもりだ。
こちらへ来い』

『…はい』

赤面して固まるナマエに、焦れた風間が声を掛ける。
ナマエは扉を静かに閉めて、彼の側まで歩み寄った。

『おはようございます。
今日は早かったのですね?』

風間は基本的に、おはようやさよなら、などといった挨拶に応じない。
ナマエが軽く頭を下げても彼は、ふん、というだけであった。

『校内でお前に会う回数も残り少なくなってきたからな。
その貴重な時間を、一秒でも多く費やしてやろうと思ったまでだ』

風間には何故だか“嫁が見つかるまでは卒業出来ない”という決まりが課せられており、今の今まで何年もこの学校で過ごしてきた。
しかし、今年度になって漸くナマエを娶る事となり、春にはめでたく卒業する事と相成ったのだ。

隣に腰を下ろそうとしたナマエの手首を掴み、風間は自分の方へとその腕を引いた。
バランスを崩したナマエは咄嗟に風間を蹴飛ばさないようにと足を開き、彼に跨がる形で倒れ込んだ。

『ほう?何とも大胆な座り方をするものだな』

『これは…!』

そうは言うが、そのように仕向けたのは当然風間だ。
しかしナマエの頭はパニックを起こしており、彼が意地悪な笑みを浮かべている事に気付かない。
何とかして不可抗力である言い訳を考えようと、懸命に言葉を探していた。

『!』

ナマエの腰を風間の両手が捕える。
驚いたナマエが退こうとするとその手に力が籠り、それを阻害した。

『お、下ろしてください…!
このまま私が乗っていたら、風間さんの腿が痛くなってしまいますから…』

風間の肩に手を添えてやんわりと押し、この状況を脱したい意志を示す。
だが風間はそれを許さなかった。

『見縊(みくび)るな。
お前如きの重さで音を上げるような身体などしておらん』

故に退かずとも良い、と最後に言うと、風間は腰に添えた手に力を加え、身体を前へ倒すようナマエに促した。
強い羞恥心から始めは抵抗をしていたのだが、風間の鋭い眼差しに射抜かれると、渋々ながら諦めて彼の首に腕を回した。
やはりタイツが認可されて良かったと、ナマエは頭の隅でそんな事を考えていた。

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