『…ごめんなさい』

『え?』

いきなり謝られると面食らってしまう。
それが普段強情っ張りな彼女なら尚更だ。
総司は目を丸くしてナマエの顔を覗き込んだ。

ナマエは泣きながらも、今まで自分の胸の内にあった思いを包み隠さずに告げた。
総司はそれを黙って聞いていたが、改めて好きになってしまってどんな顔をしたら良いか解らない、とナマエが言うと、照れたように笑い出し、外方を向いてしまった。

『…総司くん?』

ナマエが不安げに呼び掛けると、総司は咳払いを一つしてこちらに向き直った。
珍しく頬を赤く染めている。

『今まで君の事頑固だなって思ってたけど、僕も人の事言えないみたい。
…意地なんか張らずに、もっと早く“喧嘩”すればよかったんだ』

ナマエと繋いでいる手はそのままに、総司は空いた方の手で彼女の頭をそっと撫でた。

『今までは避けられてるのが怖くて悔しくて、ずっと言えないでいたんだ。
このまま黙ってたらどうなるんだろう、とも思ってた。
今日ナマエが怒り出してくれたおかげで、やっと僕も自分の気持ちを言えたんだよ』

頭を撫でていた手が頬に添えられる。
その先にされる事を考えて、ナマエの鼓動は急激に早くなった。

人通りはないから、大丈夫と言えば大丈夫なのだけど。

『…仲直り、しよっか』

背を屈めた総司の顔がすぐ目の前にある。
心臓が爆発してしまいそうな気がして、ナマエは目を固く閉じて、そして小さく頷いた。

自分のそんな反応に総司が笑ったのを鼻先で感じた。
それからすぐ、触れるだけのキスが与えられた。



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