初めて出会ったのは街中のバー。なんとなく話をしてなんとなくキスをしてなんとなく身体を重ね、その日限りの関係かと思いきや彼は度々私の前に現われるようになった。

二回目に会ったのは初めてから約一ヶ月後。三回目はその二週間後、四回目は半年空いて五回目はそれから数日後で六回目は次の日。
何故ここまで極端に不定期なのか、何故会いにくるのか、詮索はしないし向こうも何も言わない。一緒に居てもすることはセックスのみ、会話も必要最低限しか話さないから私が知ってるのは彼の名前と、この国の人間ではないってことだけ。そして彼が知るのも私の名前と自宅くらい。その距離感が私にとっては下手な男と付き合うより、ずっと気楽で心地良かった。

それは七回目の今でも変わりない。


「あら。久し振り」
「ああ」
「五年振りだっていうのに、その格好はないんじゃない?」

いつも綺麗に着用していたスーツは派手に破け、男性の割りに肌理細かい肌には血液やら切り傷やら痣やらがついていて、なんだか大変なことになってる。セックスどころじゃないわね、と笑いながら部屋に促せば後ろから小さな舌打ちが聞こえた。


「何故おまえは何も聞かない?」
「聞いて欲しいの?」
「・・・今はおれが質問しているんだ」
「聞いたって、別に私には関係ないしどうでもいい事だから」

あなたの素性とかこの怪我とか、どうして五年間も、なんてどうだっていいの。大切なのはこうして私のところへ来てくれる事実であって、あなたもそうなんじゃない?私が変わらず此処にいて、自分を受け入れてくれる事実。


「それにもう色々聞く必要もないみたいだし」
「どういう意味だ?」

今日のあなたはまるで重い何かから解放されたような、そんな清々しくて穏やかな顔してるもの。


始まりと終わり、私とあなた


Thanks!フロマージュ
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