共に逸材だと物心がついた時から周囲の人間に恐れられてきた私達に、友達なんて出来るはずもなく。常に一緒に並んでいた。寝食はもちろん勉強をするのも訓練をするのも、普通の子供がするような悪戯だって何もかもをルッチと一緒に経験してきた。


「ルッチ、これからも一緒だね」
「足手纏いになるなよ」
「今までにわたしが足手纏いになったことなんてないでしょ?」
「無いな」
「じゃあ大丈夫だよ」

正式なCP9への所属を翌日に控えたこの日でさえも、実力が認められている私達は既に与えられた任務をこなしていた。ルッチと同じ組織に所属出来るということだけでただ純粋に、ずっと一緒に居られると思っていたんだ。
あと一つか二つ歳を重ねていれば、いつか私じゃない女性を大切に思ったりするかもしれない、そんな女心があったりして、こうも素直な考えには辿り着かなかったはず。
でも現実は残酷で、その純粋な想いは見事に打ち砕かれた。油断と共に隙を作った私の身体に銃弾が埋まり、自分の身体から尋常じゃない量が噴き出しているのを見て初めて血液というものに恐怖を抱いた。
一部始終に気付いたルッチは、目の前の敵と私を打ち抜いた奴を瞬時に倒して駆け寄り、声を荒げる。


「ル・・・チ、ごめ・・・」
「喋るな!」
「ルッ、」
「分かったからっ・・・!!」


殺られたことに悔しさは感じなかった。痛みも感じなかった。あったのは、本能的に察知した別れが近付く恐怖だけ。離れることの寂しさと、悲しさも含めた恐怖。言いたいことがたくさんあるのに、肝心の声は出ず、徐々に視界は霞んでいった。


以来少年は“弱さは罪”という考えを持つようになり、数年後その背中に世界政府の模様を宿し誰もが長年思っていた通り、歴代最強と謡われるようになった。愛する者を守れなかったと自分を責め続け涙も、一切の感情をも殺し己さえも捨ててしまった彼の心に在り続ける人物は、たった一人だけ。


Vive memor mortis
(死を忘れずに生きろ)


ねえルッチ、母親のお腹に宿った時から私達のレールは、汚い大人によって定められていたね。そもそも汚い大人によって私達は生を授かったのかもしれない。それでも生まれてきて良かったと思えるのは・・・言わなくても分かるでしょう?
汚れたものしか映さなかったこの瞳が最後に映したのは、世界で一番綺麗な貴方と貴方の涙だったよ。
私はこうしていつまでも待っているから、時がきて再会したときには、輝かしくも険しい道を歩んだであろうその後の貴方のことを教えてね。


Thanks!揺らぎ
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