あなたと彼は、どんな関係?
そう聞かれたら“ただのクルーとキャプテンです”と即答出来る、けど、少しだけ違和感もある。キスのひとつどころか気持ちを伝え合ったことすらないけれど、お互いの心境はどちらも理解しているから。
この男にしてみたら今更改まる必要もないとか、もどかしいような関係を私がどう突破するのか他人事のように楽しんでいるとか、そんなところだろう。私も同じ。いつ、どうやって境界線を跨いでこっちに侵入してくるのか期待をして楽しんでいる。2人して同じことを考えているから埒があかないというのが今の状況。
駆け引きを仕掛けようとしない2人、いつになっても進まない、それすらをも楽しむ私とロー。
実にくだらなく実に愉快な関係だ。


「なにが可笑しい?」
「や、笑ってないよ」
「笑っただろ」

心の中で。そう言いたげな表情で私を凝視しながら、離れた場所に深く座るロー。どうやら今日はいつもと様子が違う。ついになにかが動き出すのか、なんてそんなのあるわけがない。


「今日の話題は?」
「そうだな。大切な話、はどうだ?」
「・・・・・・」
「どうした」

ついさっき座ったばかりなのに立ち上がって傍に寄ってきたローは、私が被る中折れのそれを片手で掴みあげて床に落とす。自ら被るアニマル柄のそれも同じように落下させながら、挑戦的な視線をぶつけて頬をさあっと撫でた。
もしかしたら私は、この瞬間をずっと待っていたのかもしれない。決して可愛らしいとは言えはない、きっと物凄く生意気な顔をしてるんだろうけど笑ってる。境界線を跨いでローの元へいくのなら、これくらいの生意気さを持っていないとね、なんて思ってしまうとはプラス思考もいいところだ。


「遠回しな会話は嫌いじゃないけど、今日は分かりやすいように話して」
「何故だ?」

だって大切な話なんでしょう?
なにも分かっていない振りをわざとらしくすると、呆れたように吐息を短く溢してローは目の前に置かれたアルコールを2つ、手に取った。


さて、乾杯しようか。
この紅い蒸留酒で。


(酔うなよ、寝られたら困る)
(酔わないよ、まだ何も聞いてないから)


Thanks/BTN
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