まぶたを数回、薄く開いたり閉じたりを繰り返して今が朝だと気付く。顔にかかる髪を手で払いながら、身動ぎをしてシーツを肩まで持ってきて、素肌に触れる柔らかくて温かい感触に私はきっと満足げに、ううん。
怪しげに、にんまりとほくそ笑んでいただろう。

もう一度意識を遠退かせようとしたところで、明け方“おやすみ”と言い合った男は同じように眠っているだろうかと顔を動かして確認をする。背中と後頭部しか見えないけれど肩が規則的に、僅かに上下している。あの目の下を見ての通り、あまり深い眠りに就かない人だから、熟睡してる姿を見るとひどく安心する。
だけど今は妙に手を伸ばしたくて。
このまま起こさないようにという気持ちと、我慢出来なくて触れたい気持ちが私の中で複雑に絡み合う。眠気なんて吹っ飛んでしまった。

結局私は自分のことしか考えていない。
背後にピッタリ密着し、片腕は自分の頭を支えてもう片腕はローの腕を越えて胸元まで伸ばし、そこにあった彼の手の甲をそっと撫でた。喉元にある後頭部にキスをすると、私の髪の香りと同じ味が広がる。ごく当たり前、なんでもないことなのに何故ここまで心が満たされるのか。清々しい朝の力はすごい。


「おはよう」

抱き締めているならともかく。
抱き締められていることにローは呆れた吐息をふ、と吐いて、重ねていた手を取り指先に唇を落とした。
そのまま私は、ここからじゃ見えもしないその唇をなぞったり、軽く押してみたりしておふざけを始める。くすくすと洩れる私の声にまたローの低い吐息音が混じって。なんて幸せなんだろうと心を弾ませていたら、指先が唇に捕獲された。


「誘ってる?」
「こっちの台詞だ」
「誘ってなんかない。ただ幸せだなって考えてたの」
「そうか。同じこと、俺も考えてた」

突然、大げさに振り返って私の上に伸し掛かる行動に出たロー。
ギャアアと色気のない叫びはすぐに唇で遮断され、狭くも広くもない私達だけのこの世界に明るい笑い声が響いた。


甘く甘く、
永遠を望んでみるんだ



愛だけで全てが上手くいくなんて
思ってもいなくて、
それでも、貴方といられたら最高


Thanks/夢に見る、無限の蝶

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