出会ったとき既にあいつの隣にいて、共にこの船へ乗った。最初は、なんて気が強い女だ、あいつもよく疲れないななんて哀れみの目で見ていたのにいつの間にかそれは、羨む目に変わっていた。今も昔も、奪い取ろうなんて気持ちは微塵もないのにどうしても、他の女にここまで気が向くことはなかった。
笑っちまうがまさに不毛の恋だ。

出会うのが遅かった。そう思うのは確実におれただ一人で、例え早かったとしてもこの女には何の支障もない。いずれあいつと出会って惹かれるように、物事は進んでいくだろう。
だとしたら、傍から離れていってしまうのを眺めるより出会うのが遅かったと思っていたほうが、ショックが小さくて済む。

それにしても慣れたもんだ。
いや、元々感情を裏に隠すのは得意分野だったか。


「なにかあったのか?」
「ううん、進路の確認。次の島楽しみだねー」

呑気に間延びした声を耳に入れながら海を眺めると、真っ青な空によく映える雲が不意に現れた。宙をゆらゆら漂うと、ゆっくり青に溶け込みまた何ひとつない空へ戻る。雲の生産元は隣から。細くも太くもなく、長くも短くもないそれを指に挟んで色と艶をのせた唇に持っていくその姿を、綺麗だと思った。


「え、やだ。思い出し笑い?」
「いや。あまりにも馬鹿な願望が芽生えちまってな」
「?変なの」


Betty

煙草になれたら。
己が身を焦がす代わりに、おまえの唇の温度を感じられるのに。



Thanks/jane
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