「あれ。久し振り」
「・・・お前か」

何気なく入った、なんの洒落っ気もない酒場のカウンターにその男はいた。行く先々で偶然顔を合わせ、顔を合わせては他愛ない言葉を交わす。それは北の海から数えてもう何度目になるだろう。
腐れ縁てやつかと思いながら、彼が引いてくれた隣の椅子に腰を沈めた。


「ちょうど、そろそろ会いたいと思ってたの。全然いい男見つからなくって」
「よく言うな」
「本当だよ。あなたは名も知れ渡ってきたし、モノにすれば私の名も上がる」
「おれよりユースタス屋を相手にしたほうがいいんじゃねェのか」
「彼ってかなり非道なんでしょ?痛いのは嫌い」

よく言うな。さっきと同じ台詞を紡ぎそうな表情を横目で確認し、グラスを口元へ持ってくる。
後ろで流れる音楽はお店に似合わず優雅なもので、そこに客共の野太い声さえなければ今日こそは上手くいきそうな雰囲気なのに。
というのも私は彼をとても気に入っている。そりゃあもう、手に入れたい男・ベスト5に堂々ランクインするくらい。順位は内緒だけど、そこには赤髪のシャンクス・火拳のエースなんかも入っているんだから。

そう、だから、会う度に手に入れようと試みるのだけれど、なかなか上手くいかなくて。でもそれが更に私の欲求を強いものにさせていた。


「おれは宿に戻る。じゃあな」

警戒しているのか随分早いお別れ。
グラスの横に滑ってきた紙幣を見て、なんて酷い人だろうと思った。こんなもので私が満足するものか。


「馬鹿にしないでよ」

思わず顔が歪む。瞬間、金属が交わる音。
私が抜いた切っ先は、彼の首まであと数センチ。
彼が抜いた切っ先は、しっかりと私の切っ先を受け止めていた。

変わらず私の顔は歪む。
それはもう愉快に。


「この二億。これが欲しいの」
「誰が渡すかよ」

行く先々で偶然顔を合わせ、顔を合わせては他愛ない言葉を交わす。言葉を交わしたら次は武器を交えて、北の海から数えてもう何度目になるだろう。

私が賞金稼ぎである限り。
彼の首に値段がつく限り。
きっとこれからも数字は増えていく。


「私はロー、あなたが大好き」


25時の美しくない恋
その首が恋しくて仕方ない。


Thanks/メリーウィドー
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