透き通った虹色の水面。
可愛らしいものから豪華なものまで、色とりどりの花がぷかぷか浮いていて、底一面には見たこともないような黄金が散らばっている。太陽の光を受けたそれは、目が眩むほどの輝き。
隣の陸にもまた見上げるほどの財宝で、これが海賊王が残した宝なのかと息を飲み、立ち尽くす私達の先を歩く恋人は今どんな顔をして何を想っているのか。

その歩みが止まって後ろの私達がごくりと喉を鳴らすと、彼は両手を広げて振り返り、子供みたいなそれはもう無邪気で屈託のない顔で笑っていた。
初めて見るその顔は、後ろに広がるどのゴールドよりも綺麗で輝いていて、力強くて。思わず駆け出した私はその胸に飛び込んだ。



「ていう夢みたの」
「ゴールド・ロジャーが残したものが大量の黄金とは随分単純な考えだな」
「私もそう思った。でも仕方ないじゃん夢なんだから」

まだ夜が明けるか明けないかくらいの時間に、隣に眠る彼を叩き起こして夢の内容を語った。
批判的な意見に不貞腐れて返すと、それを宥めるようにローは私の頬を撫でるのだけれど。内容が余程単純すぎて可笑しかったのか、幾度となく短い笑いをこぼした。


「笑いすぎ。腹立ってきた」
「悪い悪い」

瞼にそっと落ちてきた唇は、意図も容易く私の神経を落ち着かせる。
身体を横にして向き合うようにすると隣の足が絡まってきて、ついでに腕も背中に回ってきた。


「ねえ、ずっと追い掛けてた夢が叶った瞬間、人ってどんな顔するんだろう」

回した腕にぎゅっと力を入れて瞼を閉じる。


「皆とローの、そんな顔を見るのが私の夢よ。想像しただけで涙出そう」
「叶えてやるさ」

おまえが望むなら、どんな些細な願いも全力で叶える。出会ったときそう自分に誓った。
擦れた声で、それでも迷いのない決意が込められた台詞は、この人についてきて良かったと心の底から思わせる。


透明な朝に相応しい誓い

私の宝はもう見つけた。
あとは夢を叶える。


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