my lover-to-be

「久し振り、マルコ」

私達が暮らすこの場所はとにかく広い。顔を合わせ、しかも二人きりゆっくり会話をするなんて久し振り。
逸る気持ちを抑えられず斜め上にある首に腕を回し、最大限の艶を含ませ耳元で囁く。


「で、マルコはいつになったら私のものになってくれる?」
「お前も分からねェ奴だよい」
「こうまでしてるのに顔色ひとつ変えないなんて」
「わざとらしいんだよい」
「あからさま?」
「そーいうこった」


反応はいつだって同じ。変わらない、澄ました表情。
こうやって絶対に叶わない願いを抱いたのはいつからだろう。叶わないと分かっているのにどうしても、いつになっても諦められない願い。執着の原因は自分でも理解してる。



「いいから、早く私のものになって」
「そう言うテメェは誰のだってんだよい」


瞬間、天が割れた。
マルコが“父”と敬う白。
私が“男”と愛する赤。
尋常じゃない二つの覇気がぶつかる。遥々ここまでやって来たというのに、あの人が言っていた交渉は決裂したよう。



「マルコを欲しがってるのは私だけじゃないって知ってるでしょう?」
「くだらねェよい」


そろそろ此処を降りて本来の場所へ帰る頃。次はいつ会えるのかなんて検討もつかないし、それどころか会えるかどうかの保証も無い。
私達が暮らすこの海はとにかく。とにかく、広いから。


「ここまでマルコに固執する理由、知りたい?」


私に興味は無くてもそれには興味あるんじゃない?少しくらい。自虐して笑顔を誘った。
そうだなァ。聞いておくか、と間延びした声に返すのは「あなたを愛してるから」とか「そばに居たいの」とかそんなものじゃなくて。
とても、単純な理由。


「好きなの。強い男が」


恨むなら自分を恨んで頂戴ね。私が大好きな強さを得た自分を。
唇が触れそうな距離なのに、またしても顔色ひとつ変えないどころか呆れ笑いを零すマルコ。


「さすが不死鳥。本当、いかなる攻撃も効かないんだから」
「そこが楽しいんだろい?」
「そうそう」


じゃあ、またいつか。
身体を離し、笑って別れた。

勘違いしないで。
私は赤いあの人のもの。マルコに惹かれてるのは恋でもなんでもなくってただ純粋にその強さに、ものすごく、惹かれてるだけ。

今のところね。


Thanks/ace
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