海は深い藍色。
地平線の彼方にある
もう僅かで消える橙が反射し、
そこはまるで光沢が強い
ベルベットの絨毯。
この上をヌードカラーの
オートクチュールドレスで
歩けたら素敵。

でも此処は
おとぎ話の世界じゃないから
無理ね。




生きる程失いたくないものは増えていくのに、生きる程失うものが増えていくのはどうしてだろう。
楽しいことばかりじゃない。
平凡なことばかりでもない。
どこかの誰かが思い描くよりずっと苦しくて、消えてしまいたくなるくらい辛いことが沢山ある甘くない世界で。


「シャンクスは随分と名を上げた」
「ああ。残りの人生穏やかに生きていけるほど現実は甘くねェだろうなァ」


愛しあって一緒に生きて、かけがえのない存在にまでなったこの温もり。それを失くす日がいつ来ても不思議じゃないところまで海を進んできた。
何も知らない人間は、力を得ることで安定も得たと思っているかもしれない。だけど実際のところ、リスクは確実に上がってきている。
何故なら私たちが生きるのは、絵本の中でもおとぎ話でもない現実世界。
消えない傷痕を負う者、命を落とす者、悲しみと絶望は幾度となくこの瞳に映り込んできた。
きっと未来は今まで以上に見たくもない現実が多く映り込んでくる。

生きる程、失うものは増えていくのだから。


「私たちの最期はどうなるかな」
「どうなりたいんだ?」
「傍で一緒にいられるなら、なんでもいいかも」
「そーだ。心配性なお前に一つ言っておかなきゃならねェことがあった」
「大体分かるけど・・・なに?」

「こっち来い。何も怖くなんかねェ」


世界は汚れているから
僕の腕の中においで




失うことは恐れなくてもいい。
季節が巡って年月、時代が、世界が変わりその存在をなくそうとも。
得たもの。確かに在ったことは永劫揺るがない真実なのだから。




おとぎ話は
紡げるような気がした。
私のドレスがより映えるように、
隣には漆黒を纏った
普段着のあなたが居なきゃ駄目。

この世界の海が、
大好きでしょう?


thanks/narcolepsy
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