「なんて顔してんだよい」
「女は悲劇のヒロインぶるのが好きなの。だから気にしないで」
「ったく世話が焼け「そんな私も好きなくせに」
「ああ、好きだなァ」
「そういうこと今言わないで!余計に辛くなるじゃない!」

うわああと泣き叫んで乙女の矛盾をぶちまけると、マルコは子供を抱き上げる親のように腕を伸ばしてくれた。
首に縋りついて、泣いて。少し冷静になって会話をすれば、また悲しくなって。

これから始まる戦争にナースたち非戦闘員は連れていけない。それらの者はとある島で船を降り、待機することになってる。
ここまで説明すれば言う必要もないだろうけど、良く捉えれば一時的なお別れ。悪く捉えれば一生のお別れ。

どちらになるかは分からないけど、今私とマルコが別れの場面にいるのは確実。
お願いだから本物の悲劇のヒロインになんて絶対にさせないで。


「マルコ、」
「なんだよい」
「エース隊長を助けて」
「ああ」
「船長を守って」
「ああ」
「捕まらないで、生きて」
「随分謙虚じゃねェか」
「もう贅沢なことは言わないって決めたの」


捕まらずに生きてさえいてくれたらいい。そうすればきっとまた会える。
そんな、本心だけど本心じゃない複雑な気持ちをマルコは当たり前に分かってくれていることが別れをぐっと辛くさせる。


「やっぱり、」
「ああ」
「あんまりこういうの言いたくないんだけど、」
「なんだよい」

鼻をすすって、これから言おうとすることを頭の中で浮かべてみたら悲しさが一段と増した。


「ねえ、私はマルコがいないと生きていけないよ」


擦れた汚い声で紡いだのはとても安っぽい言葉だけれど、何より純粋な一番の気持ち。
またムードも何もない嗚咽をこぼし始めた私をマルコが笑うことはない。その代わり、隙間なんて微塵もないくらい強く抱き締めてくれた。


「迎えに来る。
 何があろうと必ず」


永遠も永久も今この一瞬の前には儚く霞んで見えた


Thanks/narcolepsy
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