友人が職場を辞め、自分で事業を興すと語った。
「上手くいくかなんて分からないよ。でも今試してみたいの」そう言って、新たな事に立ち向かう覚悟を彼女は決めたのだ。

私は今、地平線から顔を出してきた太陽をみて彼女を想う。
地球の汚れも美しさもすべてを受け入れ、雨が降っても雪が降っても雲に隠れているだけで毎日毎日、必ず昇る太陽。気高く美しく輝く様は、なんて綺麗だろう。


「荷物は積み終わったか?」
「うん」
「何か忘れても取りに戻れねェぞ?」
「分かってるよ」

夢を持った私は、まもなくローと数人の仲間と共に故郷を離れ海に出る。それはローの為でも他の誰の為でもなく自分の為に、自分の意志で決めたこと。


「それと、やっぱり帰りたいなんて言うなよ。いくら何でもそんなワガママは聞いてやれねェ。その辺の島になら、置いていってやれるけどな」
「ちょっ、バカにしないでよ」

静かに笑い合って言葉を交わす。
やけにふざけたことばかり口に出してくるのは、きっと彼なりに緊張しているのだろう。
ううん、僅かながら緊張しているのは私のほうであって、彼はそれを解こうとしている。
ありがとう。私は大丈夫。

この日に向けて色んなことを考えて、その中で思ったの。
きっと新しい環境っていうのは楽しいことも沢山ある反面、上手くいかなくて自信がなくなったりなんかして、泣いて逃げたしたくなるような日も絶対にある。でもそういうものって何にでも付き物でしょう?
例えばそう、海。
暗黒に包まれ、豪雨で波が荒れ狂う夜もあれば嘘みたいに柔らかい日差しと、穏やかな波が迎えてくれる朝がある。そう、何にだって素敵なことと大変なことは付き物。
だから私はどんなに嫌なことがあっても簡単には諦めないと決めた。前を向いて、常に自分が自分らしく在れる道を生きていきたい。


「ねえロー知ってる?この世の中、待ってるだけじゃ何も掴めないらしいよ」

それと人生はたったの一度きりしかないってこと。だから俯いて、いつまでも暗い泣き言を繰り返して下を向きっぱなしの人生なんて私にはあり得ない。そんなのつまらなすぎるもの。


「どうせなら明るくいきたいわ」
「良い根性だ」
「ロー譲りかもね。だから心配しないで」
「誰が心配なんかするかよ」

してるくせに。
言うと、くだらねェなと吐き捨てられた。私の頭を引き寄せ、そこに小さく唇を落とし去っていったローは記念すべき初の出航の声を上げる。

太陽は完璧なまでに昇りきった。私も、あのときの彼女のように輝けるだろうか。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -