「ゾウで落ち合おう」

ひとりで挑もうとする決意は、誰がどんなに止めても揺らぐことはなかった。
共に在れないことに憤りをあらわにしていたクルーたちも最後はその決意を理解し、尊重し、信じた。
皆がローを取り囲むなか、私は少し離れた場所の手摺りに座りながらその様子をぼんやりと見つめている。
泣きそうになんか、なってない。ほんの少しだけ、呼吸がしにくい気がするだけ。
ひとしきり騒ぎ終わると、誰かが私の存在を思い出したのか視線がいっきにこちらへ集まる。固唾を呑んで見守るという言葉が似合う空気に耐えられず、思わず噴き出してしまった。


「どうしよう、ロー。こんなときって何て言ったらいいのかな」
「おま、この場面でフツー笑うか!?」
「私そんなのイヤッ!!ローなしではいられない!とかだろ!」
「アイアイ!空気ぶち壊し!」

クルーたちの非難を一斉に浴びるなか、目の前にローがやってきて私を見下ろすから。


「私たちの事は心配しないでね」
「・・・敢えて聞く。強がりか?」

例えばここで泣き言を洩らせば、それは今後あなたの気掛かりになるでしょう?


「どうだろうね。でも信じてる」

強がりなのか、そうじゃないのかは自分でもよく分からないけれど。つまらない負担を掛けるような、つまらない女にはなりたくないのよ。


「必ず戻ってくるでしょ?私を抱きしめに、ね!」

小さな顔を両手で包み込んで笑うと、ローは呆れたように笑った。



あのときの感触が今もまだ残る、手のひらに乗ったビブルカードは徐々に面積を減らしていって何かの拍子に燃え尽きて消えてしまいそうだ。
顔面蒼白でパニックに陥るクルーたちをペンギンが一喝し、今からドレスローザに行くべきか否かを論議している。
とても呼吸がしにくい。動悸が止まらない。
ほんと最悪、泣き喚きたい気分。



「・・・行ったらダメ。これはローが決めたことよ」
「馬鹿言え!!ビブルカードがこんなになってんだぞ!?どういう意味か分かってんのか!?おまえそれでも船長のっ、」
「やめろシャチ!」


ねえ、ローが自分の想いを遂げるためにいま闘っているのなら、私も自分の想いを遂げさせて。

あなたは必ず戻る。
私を抱き締めに、必ず。
そう信じ抜いてみせるわ。


Prayer to the end
(終末への祈り)


thanks/暗がり
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