海賊がこんな洒落たバーで飲むとは。
意外性に驚いたのも束の間、すぐにお目当ての姿をカウンターに見つけた。
「ベポだっけ?かわいいクマちゃんね」そう言いながら隣に座ると、4人の視線が一斉に注がれる。すると見る見るうちに血の気が引いていく、クマちゃん含めた3人のクルー。


「お、お前は海軍のっ・・・!!」
「ウソだろ畜生!!よりによってお前みてェな海兵が何でこんな島にっ・・・!!」
「どうするキャプテン!!」

呼ばれたお目当ての張本人も、険しい表情に。
今日は正義のマントを脱いでいるっていうのに身分がバレてしまうなんて、嬉しいような悲しいような複雑な気分だ。


「待って待って、今日はオフだし戦うつもりは無いから」
「ふざけんな!!ンな言葉誰が信用するかってんだよ!」
「本当だってば・・・!」
「いいかベポ、ペンギン!お前ら油断するなよ!」
「アイアイ!!」
「ちょっ、分かんない奴らね・・・!いくらルーキーだって騒がれてても、あんた達みたいな小物を私が捕まえたところで何の得もない!自惚れんじゃないわよ!!」

露骨にイラっとした表情になる3人を見て、しまった余計収拾がつかなくなるかも、と思わず口にしてしまった台詞を後悔。もう面倒だから日を改めようかなんて考えていたら、落ち着いた声が店内に響いた。


「海兵なら・・・今ここで捕えるのが賢明な判断だと思うが」

不敵な笑みが、おれたちは大物になるぞと語る。



「何が目的だ。それともただの偶然か?」
「・・・ロシナンテ。コラソンと言えば伝わる?」

それまで怯むことのなかった鋭い視線が、わずかに揺れた。


「用件は何だ」
「特に話すことは無いんだけど・・・彼が命に代えて守ったものを、この目で見たかった。手配書を眺めるだけじゃ物足りなくって」
「・・・そうか」

お前ら少し下がってろ、とクルーたちに指示を出してマスターに2つ分のお酒をオーダーするから、ロシナンテはそんなかっこいいことも教えてくれたの?とからかうように笑った。


「・・・・・・おれを恨んでるだろう」
「まさか。私は彼を愛して、愛されていた。あなたと同じ」

恨みなんてとんでもない、ただ純粋に親しみを感じているだけだ。


「可愛くて仕方ない。連絡を取れば、いつもそう言っていた」

彼は常識じゃ考えられない程の経験をしたというのに、誰よりも慈愛に満ちた人だった。
愛を失くしたこの子に、ありったけの愛情と命を捧げた。きっと自身の幼い頃と重ねたのだろう。
愚かだと呆れる人もいるけれど、私は彼を誇らしく思っている。



「不思議なものね。初めて会ったのに、こうしてあなたの隣にいると心が落ち着く 。まるで彼の隣にいるみたい」

あなたとロシナンテはどこかよく似ている。きっと遂げたい事が同じなのね。
告げれば、ずっと閉ざされていた口が小さく開く。


「コラさんには・・・・・・感謝してもしきれねェ」

帽子に隠れていて瞳は見えないけれど、唇は確かに穏やかな弧を描いていた。

どうかこの子がいつか本当の意味で、自由になれる世界であってほしい。
これ以上失望することのないように。愛をくれた彼に、再び笑顔を届けてほしい。
きっと泣いて大喜びして、盛大に転ぶはず。


大丈夫、未来はきみにやさしい

thanks/サンタナインの街角で
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