Epilogue


同郷の彼女と手紙のやりとりを続けてもう十年近く経とうとしている。
私はそのあいだに夢を追いかけ、いつのまにか見失い、そしてひとりの男によってふたたび夢を追いかけてきた。
彼女にも多くのことが起きた。そばにはいなかったけれど心はとても近い場所にあることを、私たちはよくわかっている。

久しぶりの再会となったいま現在、叫びながら抱きあい、喜びをわかちあって彼女が連れてきた恋人に挨拶を。


「マルコ隊長ね、初めまして!話はよく聞いて……ううん、読んでたわ」
「あァ、おれもよく聞いてるよい。やっと会えたなァ」
「本物は手配書よりずっとやさしそうね!」
「あはは。あれは戦闘中だからね。普段はこんなにやる気ない顔だよ」
「最後のは余計だろい」


他愛もない話に華を咲かせる。
女のおしゃべり、しかも親友との再会ときたらもう止まることを知らない。半日は一緒に過ごせる予定で、お互い夢中で喋り続けていたのだけれど海賊ならではの事情が唐突にやってきて、すぐに出港しなければとの連絡が舞いこんでくる。
仕方ない。こうして会えたことだけで、元気な顔を見れただけでも喜びは大きい。
また手紙を書く。たくさん話そう。また必ず会おうと約束をした。


「最後にこれ、プレゼント!」
「わあ、ありがとう!開けていい?」
「もちろん。ほら、時間ないんでしょ?早く早く!」

厚みのある長方形ボックス。彼女はなにかに気づいたように驚いた顔を私に向けて、泣きだしそうになっていた。
リボンに手をかけ、時間がないというのにゆっくりと中身を暴きだしていく。宝箱を開けるときもこんな感じなのだろうか。


「ねえ……まさか、」
「ほら急いで!」

私は、ひとりの男によってふたたび追いかけてきた夢をついに実現させて、シューズ・デザイナーとなった。


「……っ!すっごく綺麗……!!」

プレゼントの正体。
財宝ほど高価でなくとも、愛情の大きさだったらきっとなににも負けない。
彼女にとっては実用性に欠けるかもしれないけれど、ゴージャスでいて健康的な美しさも見せる鮮やかなハイヒール。





靴は人生にとって大切なキーパーソン。
信じた道を走りぬけて素敵な景色をみた瞬間。
複雑な道を慎重に歩いたときや、険しい道に疲れ、立ち止まって泣いたとき。
いつでも持ち主とともに道をすすんできた。

あなたは、これまでどんな靴を履いてきた?
いまどんな靴を履いている?
これからどんな靴を探そうか?

つまずいても、転んでも、ゆっくりでも、迷ってもいい。ときには立ち止まって泣いてもいいよ。
迷った道に入り込むのも靴で、なにかにぶつかってつまずくのも靴。

だけど、新しい一歩を踏みだすのも靴。

つま先はいつだって前を向いているから、
その足はいつか必ず幸せにたどりつく。



end

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -