All's fair in love and war.

「ンマー打合せは以上だ。午後もよろしく頼むぞ」

太陽と時計の針がちょうど真上に来る時刻、主要メンバーを集めた打合せが終了。
特有の緊張感から解放された会議室で「飯だ飯!」「今日は何食うか!」なんて言葉が飛び交っているなか、打合せに参加していたマルコさんに次回の来社日時を確認しようと名前を呼ぶ。
視線が絡む、そんな当たり前のことを分かっていてもいざその眠たげな瞳がこちらを向くと胸が弾むんだから、我ながら愉快な性格をしている。

そのまま近くに寄ろうとすると、両腕を引っ張られる感覚が。何事だと驚いてしまう。


「ダメじゃ」
「今日は行かせねェ」

両サイドに現れたカクとエースはそれぞれ私の腕を掴み、立ち尽くしている。
ふたりはマルコさんを見据えてきっぱりと言い放った。


「「今日はおれ(わし)らと飯なの」」


くっ・・・!か、可愛い・・・!!
いや、悶えてる場合じゃない。


「ち、違うよ・・・!私はマルコさんに確認したいことが、」
「油断すんなName、それがあいつの手口なんだ!」
「そうじゃよ。目を離した隙に連れてくつもりじゃ」
「いや、手口も何もこっちから話しかけて・・・・!」

困惑する私、呆れ顔のマルコさん、無駄にドヤ顔のカクとエース。いつのまにか静かに私たちを見守るその他大勢。


「・・・。今日は夕方まで社内にいるよい」
「す、すみません・・・!また」

半笑いで謝りながら諦めて、二人と共にその場を後にした。


「なんなのよ一体・・・!」
「だってなーカク」
「のう、エース」
「なにその連帯感。可愛いけど」
「Nameと飯食うのが一番落ちつくっつーか」
「ルッチやサッチやパウリーは説教しかせんしのう」
「そこっ!?私を盗られたくなくて、とかじゃないの!?」
「なんじゃそれ?」
「誰に盗られんだ?」
「もーいい」

可愛いと思った私の気持ちを返せっ!
ゴキゲンでピザを頬張る二人とは対照的に、怒りながらそれを頬張る。


「あーそういやマルコの奴、最近お前に会いに来てるらしいぞ」
「なにィっ!?」

私の奇声に隣のカクがびくっと肩を揺らす。さらりと爆弾を投下するエースはいつもの無邪気なにこにこ顔。
一体どういうこと!?と歓喜の声で問い詰めても「さあ、なんかよく知らねェけど聞いた」「誰から」「忘れた。このピザうっめェな!」「ああああ!」まったく話にならないから凄くもどかしい。
マルコさんが言ったのかな!?だとしたら気に入ってもらえてるってことかな!?と妄想でお腹が膨らんだせいか、ピザを口にしたのは一切れだけで残りはエースに快く譲った。

ゴキゲンで午後を迎え、社長室へ向かおうと移動しているとお目当ての姿とばったり。


「あ!マルコさんお疲れ様です。今お時間大丈夫ですか?」
「あぁ、お疲れ。大丈夫だよい。さっきの件だろ?」

そのやわらかい笑顔を見ると何だか優しい気持ちになれる。胸の奥にのどかな花畑が広がるような、華やかでいて穏やかなあたたかい感情。


「はい、ありがとうございます。来週の社長との日程なんですけど、」

スケジュール表を開いたタブレットに目を落とし、いま一度上を見上げるとマルコさんの瞳は私の向こう側を捕え、挑戦的な色を含ませていた。その様子に思わず私も振り向いてしまう。


「お疲れ。険しい顔してどうしたんだよい」

マルコさんの言うとおり、そこには普段よりいくらか不機嫌顏のルッチが。
なんだこの距離!って驚愕するくらい私の目の前にきて、そこから退こうにも背中側では同じようにゼロ距離で立つマルコさんがいる。


「うちの猫に餌付けするのはやめて頂けないか」
「なんの話だか分からないねぃ」

ルッチとマルコさんは家が近所なのだろうか。
頭のてっぺんで感じるよろしくない雰囲気に、波風を立てぬようそのまま動かず気配を消しているとするりと腰にまわってきた腕。確認しなくてもマルコさんのもので、私の体はいつかのマウス事件のように硬直する。
大胆なものではないけれど、さり気ないながらもしっかりと伝わる感触と体温に、軽く、いやだいぶ眩暈を覚える。


「さすがは優秀弁護士。取り繕うのが実にお上手だ」
「お前は何が言いてェんだよい」
「餌付けはやめて頂きたい。それだけだ」
「随分大事にしてるんだねい、ルッチ」

体中で警鐘が鳴り響いているかのように心臓が激しく鼓動しているから、頭はほぼ真っ白で頭上の会話なんかまったく聞こえない。


「貴様にだけは渡したくなくてな。ちなみにうちの虎もおれと同意見らしい」
「・・・・・・おれも男だからねぃ、欲しいものはちゃんと手に入れたい主義なんだ。そっちがそうなら遠慮はしねェよい」
「まずその腕を離せ。遠慮しないにも程があるな」
「ははっ、威勢が良いなァ。さてName、これから社長室だろい?一緒に行くか」
「・・・え!?あ、はい・・・!!」

パニックワールドから現実に引き戻されても鼓動はまったくおさまらず、どうにか意識を保つことで精一杯。
別に純情なタイプでもないのに何故今さら、こんなにうろたえてしまうのだろうか。
元凶はマルコさんだと分かっている。
分かっているけれど抗議なんてできるはずもない。

to be continued.

thanks/構成物質



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -