You are so sweet and somehow you make me blush.

あの日の夜にサッチと飲みに行き、ローが私にやらかしてくれた事を話したら大爆笑された。
それを見たらなんだかもうどうでもよくなって、たかが前髪にキスなんて(悲しいことに)純情な女じゃあるまい今さら騒ぐこともない。ここはひとつ、小生意気な男だということで寛大な対応にシフトチェンジすることにした。

それにしたってパウリーにしろサッチにしろ、誰も同情してくれないというのが切ない。その時ふと、社の顧問弁護士を担っているマルコという男が浮かんだ。周りが周りだからか、彼は私の中で紳士的な印象が強い。具体的にと聞かれたら上手くは答えられないけれど、落ち着きのある知的な雰囲気でどことなくスマートな人。個人的な話を長々する機会はあまりないから、どういった人なのか詳しくは知らないけれどとても好印象を抱いていた。
なんとなく思い出したら、なんとなく気になってしまうなんて単純。
どれだけ癒しを求めてるんだろう私・・・なんて一瞬危機を感じた前夜の感情が、本人を目の前にしてよみがえった。


「どうしたんだよい」
「あ、ちょっと考え事してました」
「仕事のことか?忙しいんだろい?あんまり無理すんな」
「全然ですよー。いかに上手く手を抜くかってことに全力注いでますから」
「それは大切なことだよい」
「あはは、分かってくれます?それにしてもお待たせしてしまってすみません。今日はどうしても抜けられなくて」


社長の会議が長引いているため、お待たせしてしまっている状況。
当たり障りのない会話をしながらコーヒーを出して退室しようとすると、さり気なく話題を振られたので話相手が欲しいんだろうと読み、向かいのソファにそっと座った。



「そういや今日は前髪上げてるんだなァ」

些細な変化に気付いてもらえて、色んな意味で胸が高鳴る。いつもそこまで見られていたのかという軽い後悔と嬉しさ。
たまにはすっきりと、なんてへらりと笑うと、彼は僅かにほほ笑みながら「似合ってるよい」とカップを傾けた。
柄にもなくちょっと照れてしまったり。


「ありがとうございます。・・・マルコさんてうちの社にいないタイプの方ですよね」
「どういう事だ?」
「大人で紳士ですごーく穏やかで、女の気持ちを分かってるっていうか」
「なんだそりゃ」
「意外といないですよ、そういう素敵な人、。私はすごく好きです」
「ははっ、ありがとよい」

可笑しそうに笑うマルコさん。
そのまましばらく談笑していると内線が鳴った。


「マルコさん、やっぱり会議まだ終わらないみたいで、もう少しお待ち頂くか日を改めて来て欲しいと社長が・・・。申し訳ございません」
「あァそうかい。この後他の仕事もあるし、日を改めて来るしかなさそうだなァ」
「せっかく来て待って頂いたのに本当にすみません」
「気にすんなよい。社長が忙しいなんて良いことじゃねェか」
「ありがとうございます。あ、私お昼買いに出るので外までお見送りします!」

お昼休みモードで気が楽になったのか、ロビーに行くまでの間は軽いプライベートな話も出来た。
エレベーターを降ると、向こうから外出帰りのルッチが歩いてきて私たちの前で足を止める。


「どこに行く気だ」
「?どこってお昼買いに行くだけだよ」

その視線はちらりとマルコさんに向いてまたすぐ私を捕える。


「・・・さっさと買ってさっさと戻れ」
「え?なに、何かあるの?」

返事をせずエレベーターに乗り込んだルッチ。
あいつが横暴なのは今に始まったことじゃないから、特に気にもしないでマルコさんと騒がしいロビーを抜け青空の下に出た。


「うわーいい天気ー」
「時間さえあれば、うまい飯屋にでも連れて行ってやりたいところなんだけどよい、」

隣から差し出された手のひら。
すぐ先には石造りの小さな階段があり、やはり正真正銘のジェントルマンだと思いながら右手を重ねた。

「次の予定もびっしりでなァ」
「残念です。次来て下さるときは後の予定入れずに来てくださいね、あはは」


地面が平らになったところで自然と離れた手を、少し寂しく感じながら挨拶をして私たちはそれぞれ逆方向に分かれた。



コンビニ袋を下げて今度はひとりで小さな階段を上り、ロビーに入る。
大理石とぶつかるマノロはなんだかやけに、軽快な音を立てていた。


to be continued.



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