仕事から帰ってすぐにソファで寝落ちしてしまい、変な時間に目が覚めてから覚醒してしまった。まあ週末だから構わない。ゆっくりお風呂に入ってリラックスしよう、と貰いもののキャンドルの灯りひとつでパックをしながら湯船につかる深夜3時。
服を脱ぐ前に玄関を見たら、同居人の靴はなかった。きっと今夜もひどいクマを浮かべながら終わりの見えない仕事に励んでいるのだろう。
そんなことを考えながらひと息つくと、浴室の扉が音もなく静かに開き、暗闇の脱衣所に立つ人影が見えた。

「っぎゃああああ!!」
「な…………」

素っ裸のローが目を見開いている。
私は、純粋に驚いたのとなぜそんな格好なのかという驚きと困惑でパニックに陥った。

「なっ、なになになに!!なんなの!!なんで!!」

せっかくのパックが崩れたとかどうでもいい。とにかく叫ぶ。
そんな私をよそにローは、みるみる死んだ魚のような目になり「それはこっちのセリフだ」とでも言いたげに立ち尽くしている。

「ぜ、全然物音しないし気配しないしホントなんなの!?びっくりした!!ていうか変態感丸出しだから隠すそぶりくらいすれば!?いや、それより早くそこ閉めてよ!」

ローはため息をひとつ。隠すことも出ていくこともせず、あろうことかそのまま浴室に足を踏みいれてシャワーを浴びだした。

「なにしてんのっ!?」
「めんどくせェ」
「なにが!?」
「おまえが出るのを待つのがめんどくせェ」
「……は……なに言ってんの……!」
「寝てるだろうと思って物音立てずにここまで来たってのに、湯船にはバケモノがいた挙げ句変態扱いされる仕打ちだ。おれはおれのやりたいようにやる」
「はああっ……意味わかんない……!なにが悲しくて彼氏でもない男と一緒にお風呂入んなきゃいけないの……!」

出、て、い、け、!、とリズムに合わせて浴槽のお湯をぶっかけるも、シャワー中だからなんの意味もない。

「あーっそう!もういい、あんたがめんどくさいって言うならこっちだってめんどくさい。好きにすれば!」

はんっ!と鼻息を荒くしながら発した言葉は、シャンプーに突入したローに届いているのかいないのかわからない。もう本当、どうでもいいやと今度は私が死んだ魚の目になった気がした。
それにしても入浴剤を使っててよかった。いや、むしろ無色透明なお湯で私の裸が丸見えだったら、少しくらい遠慮して出ていってくれたかもしれない。
……いやいや、それにすら動じないか。
やることを済ませたらさっさと出ていったローのあとに続いて、私もそそくさと上がった。リビングへ行くと、ローは通販番組をBGMにしてソファで缶ビールを傾けている。

「……くっ……」
「なに。その笑いは思い出し笑いだよね」
「……や、Name、おまえ見事に慌ててたけど、それはおれが乱入してきたことに対してであって……」

くつくつと喉を鳴らすローはこのうえなく愉快そうだった。どうせまたなにか馬鹿にされるんだろうと先を予想しながら、ダイニングテーブルのほうで私も缶ビールを傾ける。

「おれの全裸に対してはちっとも動揺しないのな。普通どっちかっていったら逆だろ、ははっ!」
「ああ。股間丸見えだったけどね。ローのなんか見たってべつになんとも」
「奇遇だな。おれもだよ」
「あんたが見たのは私の肩から上だけでしょ!」

こっちでは怒って、あっちでは笑って、深夜になにやってんだかと呆れてしまう。

「ねえ。仕事でなにかあったの?」
「なんで」
「妙にイラついてたから」
「よくわかったな」

話聞くよ、と言うべきか、触れないでおくべきか、まではわからないけれど。

「まァそんなのどうでもよくなったけどな」
「え、なん……「Nameのまぬけな顔見てると、気が抜けるんだよ」

また肩を揺らすロー。本当だったら、まぬけとはなんだと反論したいところだけれど、それでローが笑顔になれるならいいかなと思ったり。
とりあえず、今後どんな理由があろうと相風呂だけはやめてよね。



to be continued.
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