愛することは、 | ナノ


すべてがうまくいく
世の中ではないけれど、
愛することは究極の自由だ 


Story 3


「フッフッフッ・・・どうしたName。何か悩み事か」
「・・・そうねーまあ、うん。私に悩みがあったら可笑しい?」
「いいや。ただ珍しい顔してやがるから気になっただけだ。フフフ」


この男にまで指摘されるほど、上の空な毎日。
先日の出来事は未だまったく理解できず、彼はただの馬鹿なのか、もしや狂気からくる優しさなのか、と様々な疑問が胸の中でぐるぐると蠢いている間もずっと、おれはこれで良いと満足そうに笑った顔が頭から離れなかった。

今日は子どもたちを鍛えあげた後、海賊と一戦交えて今から裏町でお決まりの密会。わりとハードな日々なのだ。
ロシナンテは私を見ると驚いた様子で、すぐ様能力を使った。


「おい、それどうした。よく見せてみろ」

顔に手を掛けられて、上を向かされると私の心臓は一瞬跳ね上がる。まじまじと見つめてくるから、訳が分からず硬直するしかなかった。


「血が出てるじゃねェか」
「え?あ、たぶんさっきの海賊に、」

そっと頬を拭ってくれた指の感触が優しくて心地良い。


「あ・・・りがとう・・・」
「傷なんておまえらしくねェ。どうしたんだよ」


返事をできずにいると、小さく笑ったロシナンテはほんの少し私を抱き寄せゆるりと後頭部を撫でた。距離のせいかいつもより濃く感じる煙草の香りが、妙に安心感を与えてくれる。


「この前おまえがこうしてくれて、嬉しかったから」
「え?・・・ちょっ、火!!燃えてる!近い!!」
「うおっ!!」


ひたすら考えて、ようやく辿りついた結論はとてもシンプルなものだった。
彼はただただ、純粋に、心優しいのだ。私やファミリーの人間とは違う、一切混じりけのない優しさと愛情深い心を持っているだけ。
それに気付いたと同時に、ロシナンテという男に惹かれた。恋の類いか、ただの興味本位かは分からないけれど嫌いな感覚じゃなかった。






Nameを見た瞬間、思わず声を出しそうになり慌てて能力を発動した。
軽い擦り傷だがそんなものを負ったことも、気付かないこともこれまでのNameを見ていたら珍しくてその上最近はどこか考え込むような雰囲気をまとっていたから、一体何があったんだと心配になる。

手を伸ばしてうっすら滲んだ血を拭うとどことなく安堵した表情を見せ、それは初めて年相応に見えた瞬間だった。
幼い頃から辛く厳しい訓練を受けてきた彼女は、愛を知っているのだろうか。おれが父や母や元帥にもらってきたような愛を、彼女にも与えたい。
同情なんかじゃない。無償で構わない。
そう強く思った。


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