すべてがうまくいく
世の中ではないけれど、
愛することは究極の自由だ
世の中ではないけれど、
愛することは究極の自由だ
Story 1
13歳の頃ドンキホーテ海賊団に出会い、ガキにしては中々の腕前だと見初められそのままファミリーの一員となった。
この海賊団は、必ずや世界の脅威となるとして昔から政府は厳しく目をつけられていてその動向を探るべく政府から派遣されたのが、世界政府直下暗躍諜報機関サイファーポールNo.9の私だ。世間には知られていない闇の組織。物心がついた頃から諜報活動に必要な技術を徹底的に叩き込まれた人間は、この任務に適役だった。
つまり出会いのきっかけはもちろん拾われたこと、迎え入れられたこと、すべては政府の計画。後者に関しては実力次第だったけれど。
「Nameさん、紅茶をどうぞ!」
「ありがとう。今日も可愛いねベビー5」
「ありがとうございます!あ、コラさんもどうぞ!熱いので気をつけてくださいね!」
そんな私の前につい先日現れたのが、コラソンと呼ばれる男。本名ドンキホーテ・ロシナンテ。彼はドフラミンゴの実弟にして海軍中佐であり、私と共にこの場所で諜報活動に務めるいわば同志だ。
事前にセンゴク元帥と直属の上司、スパンダイン長官から聞いていたものの、彼に対しての不信感がどうやっても拭えない。
ベビー5から受け取ったカップに口をつけた瞬間、噴き出してひっくり返る姿はもうお決まりの光景。
紅茶を飲めば噴き出し、煙草を吸えば服に引火し、歩いてみればすっ転ぶ究極のドジ。喋れない設定が唯一の救いだと思う。
「“ホットケーキ!!”」
「“パンケーキ” 私です」
「おお、Nameか。どうした?」
「ちょっと長官、なんなのあいつ!いくら弟だからってあんな奴寄越さないでくださいよ!」
「ん?あぁロシナンテとかいう奴のことだな。そういう話はおれじゃなくて・・・あ!ちょ、スパンダム!!」
「Nameか!?久しぶーってアッチィィ!!チクショウ!」
「もう切ります」
ここにもドジがいた。そのまま元帥の電伝虫へとコールを鳴らし、先程と同じ文句を一通り述べるも「どうにか上手くやってくれ」と宥められて終わり。どいつもこいつも、他人事だと思って!と私の怒りが収まることはなく、当の本人を人目のつかない場所へと呼び出した。
政府側として2人きりの状況になるのは、これが初めてのことだ。
「とりあえず能力」
「・・・?」
「能力で防音にして」
「ああ・・・“サイレント”」
「あんたなんっっでそんなドジなの!!??任務の為の演技なの?!」
「ああそうだ」
「肩燃えてるわよバカ!」
「昔からドジっ子でな」
「知らないわよ!いい?1人でヘマをするのは勝手だけど、私にまでとばっちりが来たらどうするつもり?!遊びじゃないのよ!」
年下にここまで貶されたら、大抵ぶち切れるだろう。私がもしルッチにそんなことを言われたら殺す寸前まで、ぶち切れる自信がある。
それにしても、これだけ気にせず叫べるなんて最高の能力だ。
「Name・・・お前はいくつで此処に?」
「13よ。5年前」
「そうか。可哀想になァ・・・」
「なにが?そのドジのほうが可哀想よ」
「まあ、なんだ。馴れ合おうとは言わねェが、同じ任務に就いた者同士仲良くやろうぜ」
ピースサインをしてニカッと笑うそばから、引火。もう何を言っても無駄だとすべてを悟り頭を抱えた瞬間だった。
「わぁ・・・Nameさん見て!あっちに綺麗なお花畑があるよ!」
「どこ?わ、凄いね!」
「行ってみようよ!コラさん、少しだけいいでしょ!?」
ベビー5の問いにふい、と横を向いて「勝手にしろ」と意思表示をする。
CP9から派遣されたというNameは、なんの違和感もなくファミリーに馴染んでいた。ドフィからも気に入られ、ベビー5とバッファローとデリンジャーからは姉のように慕われ、その他のメンバーからも一目置かれるような存在。年下のくせに育った環境のせいか、どこか大人びた雰囲気を持つ女。
もったいねェ、なぜ諜報部員なんかに。
そう思わずにはいられなかった。
「お疲れ様。これベビーがあんたにって」
外の音を遮断した空間。度々おれたちはファミリーの目を盗んで会い、業務報告をし合うのが決まりになっている。
「なんだ?」
可憐という言葉が似合う何本かの花を、Nameが差し出している。
「あんたの為にって摘んでたんだけど、途中で気付いたのね。自分が渡してもどうせ殴られて捨てられるってぼやいてたから、私が預かったの」
「・・・・・・!!ごめんなァ、ベビー5・・・」
「あはは!落ち込むくらいなら冷たくしなきゃいいのに、バカね」
「だってよォ・・・!」
「すごく綺麗ね。大切にしなさいよ」
初めて自分だけに向けられたその笑顔に、嬉しさはさらに募る。
「Name!お前までっ・・・!」
「ちょっ、なに?!近い近い!ていうか肩燃えてる!!」
この花は、こっそり部屋に飾ろう。
足取りが軽かったせいか、いつも以上に転びながら部屋へと帰った。
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