愛することは、 | ナノ


すべてがうまくいく
世の中ではないけれど、
愛することは究極の自由だ 


Story 4


「どうしたの?珍しい」

自室で片付けをしていると、ロシナンテの姿が。まだ能力が掛かっていないからか彼は何も答えない。どことなく違和感のある立ち振る舞いが奇妙で思わず手を止めたけれど、こちらに向かって何歩か歩いたところで足を滑らせたのを見て視線を戻す。同時に床と体がぶつかる音が響いた。


「なんの用ー?」

書物を一つ一つ棚に並べていく。いつになっても返事どころか能力が発動される気配が無いので振り返ると、手に握られた花束から零れ落ちたらしい色とりどりの花びらが、倒れた体を囲むように散らばっていた。


「ちょっ、掃除したばっかりなんだけど・・・!どうしたのその花」

ピクリともしない、倒れたままの大きな体に向かって問い続ける。


「ねえ」
「ねえってば」
「いつまで倒れてんのよ」
「・・・。まさか頭でも打った?!」


最悪の事態が脳裏を過ったので、慌てて駆け寄り顔を覗き込んだ。
パチリ。効果音が付くなら間違いなくこの音だろう。私の心配をよそに「引っ掛かったな」と言いたげな瞳を見せたロシナンテは、この前より強めに私の後頭部を引寄せ唇を重ねてきた。
1秒だったか、10秒だったかは分からない。





この愛を伝えよう。
拒絶されたら、それはそれで仕方ないけれど自分を愛する者がここにいることを知ってほしい。

いつか綺麗だと言っていた花束を後ろ手に抱えてNameの部屋を訪れる。
さあ、この気持ちよ伝われ!と近寄ろうとした瞬間に発揮してしまうドジ。
こんな時までかよ、と恥ずかしくなり身動きを取れずにいるとNameがそばに寄る気配がした。

ちょっとした悪戯心が芽生え、目を開くと心配そうな眼差しでおれを見下ろすNameの顔が目の前に広がっていたから、思わず手を伸ばして唇をぶつけた。





「・・・・“サイレント”」

離れながらロシナンテはそう呟き、今度は花束が目の前に広がった。


「好きだろ?前に、綺麗だって笑ってたから」

屈託ない笑顔にすべてを奪われた。
その心には愛が詰まっている。



「好きよ。花も、あなたも」
「おれもだ」
「キスのときはドジらないのね」
「当たり前だ」


そう言って煙草に火をつけた瞬間、肩に燃え移ったのは言うまでもない。



すべてがうまくいく
世の中ではないけれど、
愛することは究極の自由だ



強気なしっかり者と優しいドジっ子のあいだに生まれた愛は、どんなふうに育つ?

fin.
thanks/MITSUKO!

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