ケイローン×ゲオルギウス

【白子のケイゲオの場合】
愛してると突然言われた。嘘をついていい日は過ぎたよと笑えば嘘にされたらかなわないと返ってきて面喰らう。それから嘘だ嘘じゃないのやり取りを数回繰り返し、最後に言われたのは至極真面目な声音の愛してるだった。
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 思えば人理修復する中で我々は結構な時間を共にしていた気がする。マスターになって日も浅く、魔術師としての知恵も最低限あるくらいの、殆ど一般人と変わらないマスターに勉学を教えていたのは私とゲオルギウス殿だ。彼と一緒には教えたことはないが、生徒にどこまで教えたか等の共有はしていた。それらも含めれば二人きりで過ごした時間は長いと思われる。もっともこういう風に考えているのは私だけだろうが。

 人理修復を為してからもマスターとサーヴァント達にとっては修復前と変わらず忙しい日々には変わりなかった。これまで行った特異点や新たに出現した微小特異点の修正。それらを円滑に為すためにサーヴァント達の強化品や種火の周回回収。シミュレーションを用いた強化訓練。簡単な報告書の作成、その合間に我々の講義……とまあ、多忙を極めるマスターだが時には休息も必要だ。それが一日の内の何時間しか自由が無いとしても、我がマスターは空いた時間を全力で楽しみそして全力で寝るのだ。アラームがちゃんと仕掛けられているかを確認し、腹部にしか掛かっていない毛布を掛け直してからマスターの部屋を後にする。
「ケイローン殿」
「おやゲオルギウス殿。マスターにご用ですか?」
 軽く会釈をした彼の人は何時も見る甲冑ではなく、簡易礼装だった。黒のタートルネックにベージュのボトムス、赤いショールを羽織っていた。成る程時刻はもう夕方だ、カルデアの中に入れば極端に暑い寒いということはないが、人に寄ってはこの気温は寒い若しくは暑いということになる。万人全てが納得することなど難しいが、それを分かっているからこそ人は歩み寄りそして出来ることがある。
話が逸れた。ちなみに私はどちらでもなく丁度良いと感じている。
「マスターに先日撮った写真をお持ちしたのですが……どうやら仮眠している様ですね」
「えぇ先程眠ったばかりなので、後二時間は確実に起きないと思います」
「そうですか。ではこちらはまた後で持っていくとしましょう」
 部屋に置いて置いても良いと思うが手渡しで確実に渡すというのが実にゲオルギウス殿らしいと思った。確かに直接写真を渡せばマスターは目の前で大いに喜ばれるだろう。何か事を為した時、直接本人が喜んでくれるというのは何何物にも変えがたい喜びになる。以前マスターからゲオルギウス殿が撮影した写真を見せて貰ったことがある。その時のマスターの喜び「この写真はね…」と子どもの様に目を輝かせながら話してくれたのを思い出す。そんな彼が撮影した写真を見るのは、いつからか私も楽しみになっていた。
 ああ……違うな。写真は確かに楽しみの一つだが、それ以上に私はこの人自身のことが……。
「ケイローン殿、この後お暇ですかな?」
「そうですね…この後は特に授業も何もないですが」
「ではアフタヌーンティーに付き合っては頂けないでしょうか?」
 カルデアに務める職員から茶菓子と共に貰ったのだが、一人で食べるには……という量らしい。魔力回復等々関係なく最近では甘いものに目がないらしいサーヴァントとしてゲオルギウス殿の名前が上がることは知っていた。恐らくカルデア職員もそれを知ってか知らずか、彼に甘味を渡したのだろう。推理する間もなく。簡単なことだ。
「勿論無理にとは言いませんので」
「いえ喜んで呼ばれましょう」
 良かったと微笑むゲオルギウス殿とほぼ同時に歩き出した。
 着いた場所は食堂ではなくゲオルギウス殿に宛がわれた部屋だ。私室に招かれるということに不覚にも高揚してしまう。胸の高鳴りを抑えつつ、通された先にある小さくシンプル過ぎる椅子に座る。簡易テーブルの上には貰った茶菓子……ドーナツといったか……とティーポットにカップが二つ。ケトルなるものからポットへお湯を注ぎふくよかな香りが出るまで暫しの沈黙。ふと視線をゲオルギウス殿へ向けると目が、あった。また一つ胸が高鳴った。
「もう少しでしょうか、先に召し上がってて下さい」
 そう言うと彼はポットを軽く揺する。……ゲオルギウス殿は私の胸の内を知らない。知るはずもない。言ったことがないのだからそれは当然かつ当たり前のことだ。言うべきか否か。何時も迷っては言えず仕舞い。これでは生徒達へきちんと物事は伝えるべきだ……と言っていることに対してのの面目が立たない。
先ずは伝えるべきだ。
「ゲオルギウス殿」
「はい、なんでしょう?」
「私は……貴方のことを、……愛しています」
 ポットから漏れる紅茶の良い香りと、トポトポトポ…とカップに注がれる琥珀の色。二人分の呼吸。
「ケイローン殿」
「はい」
「嘘をついて良い日は先日で終わりましたよ?」
 にっこりと微笑みながらゲオルギウス殿からお茶どうぞと受け取る。先ずは一口飲んでから……。
「ゲオルギウス殿、今の言葉は嘘ではありません」
「分かっております、他者を愛することは主のアガペーと同じ…」
「私はもっと親愛以上の意味で貴方自身のことを愛してるいるのです」
 生徒達に接する様な柔らかな笑みがゲオルギウス殿から消えた。ぽかんと口を開けて数秒固まったあと、頬がやや赤らんでくる。私の言葉の意味を理解してくれた…のだろう。いやはや愛らしい。
「嘘、ですよね?」
「嘘ではありませんし、勿論冗談でもありません」
「あ、いや、あの、ケイローン殿が嘘をつく方では無いと分かっていますし、私もケイローン殿のことは……その、好き、ですけど…」
「今はその好きだけで十分ですよ」
 親愛から出ず極僅かでも、アガペーの内でもゲオルギウス殿が私を好いてくれているならば先ずはそれで良い。後々ゆっくりと愛を育んでいけると思っているから。
テーブルに置いてあるゲオルギウス殿の手を取り両手で握り締める。びくりと跳ねたが引っ込めることはなかった。私も存外単純なのでそういう良い方向に取ってしまいますが……良いでしょうか?
「……良いですよね」
「ケイローン殿?」
「あぁいえ、なんでもありません。愛しています。ゲオルギウス」
「あ……はい、有難う、ございます…?」

 


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