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みんなには、内緒

GL

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 好き、そう言った言葉はけれどあまりにも嘘吐きだ。
 セルリアはアマネに好きだと言った。2人の好むローレのもりの奥地、爽やかな風の通る秘密の隠れ家で、切り株の上に腰かけながら。野生のレディバやバタフリーを目の端に映し、それでもセルリアはアマネから目をそらさぬままに猛るような想いを吐く。
 アマネがいないと生きられないと、怖くて立つのもままならないと本心からの言葉を放つ。それは決して偽りでなく、ありのままの言葉、気持ち、真実そのものであるけれど。もちろん誰が聞いたって疑わない、「好き」のひと言さえなければ誰もセルリアを否定しない。なぜなら2人の仲というのは、かたや姫でかたやアイドル、つまり双方が有名人。ゆえにカバタじゅうの誰もが知るところであるから。
 けれどアマネは知っているのだ、理解している、14歳という若さながら、セルリアの言う「好き」が無理に恋愛という型に嵌めたまがい物であることに。セルリアの持つ執着とも言うべき想いは決して恋愛という括りひとつに当てはめるものでないということ、それがいつかセルリアの身を滅ぼさんとするだろうことも、イエスでもノーでも明るい未来は待たぬだろうということも。どこか精神的に未熟なセルリアゆえわからなかったのだろう、カバタという同性愛や異種族恋愛に寛容な地に生まれ育ったことも相まって、今の自分の気持ちを恋愛以外で表す術がわからなかった、そうアマネは考えている。
 セルリアの想いは、言うなればただの依存である。弱く、脆く、立場ゆえに何かを頼らずにはいられない、そんな心のヒビがひどくアマネを求めていた。アマネは知っている。セルリアが本当は異性を好むこと、本当は、例えば別の誰かがいれば自分を頼らなかったこと。
 それでもアマネは頷いて見せる。うん、あたしも好きだよと、友愛の意を隠しておいて。それがセルリアを救わないと、この道は間違っているのだと知りながら、それでもアマネは撥ねつけない。
 ただひとりの友人として、セルリアを支えると決意した、守り、笑顔を与える、そんな人になろうと在りし日に誓ってしまったから。過去の自分は裏切れない。たとえそれが、我が身や魂を売るような行為であったとしても――

20170328
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