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言うなれば、デート。

 ぽつり、ぽつり、どこか重たい足取りで歩くひとりの少女がいた。足元の石畳を見つめる顔はそれほど沈んでいないように見えるが、けれどやはり明るく快活と言うには程遠い。どこかまどっているような表情を受けて、彼女の連れているキノガッサが気遣うように身を寄せる。
「あ、ピィテル……ありがと、大丈夫だよ!」
 ちょっと緊張してるだけ、そう言いながらも少女の足は遂に止まった。辿り着いたのはカバタ地方のヴィラナ博物館。少女が――ユニヴェルが今回足を運んだ理由、会いたい人のいる場所だ。
「こ、ここに、リバティさんが――よしっ!」
「俺が何だって?」
 カキン。
 それは、何が誰にぶつかったわけでもなく、何かが凍った音でもなく。出し抜けにかけられた声に驚いたユニヴェルが固まった音、それだった。
 瀕死手前のギアルがごとくぎこちない動きでユニヴェルが振り返る――その前に。大きな手がくいと顎にまわされ、ユニヴェルは後ろを振り向くより先に顔を上げる羽目となった。
 そこにあったのはどこか愉快そうに笑う犯人――リバティと。抜けるように高いカバタの青空であった。
「う、うわぁ、きれい……っ」
「でしょう」
 雲一つない青空のなか、空を駆けるのはポッポの群れ。鳥たちが過ぎ去ったかと思えば今度はハネッコやポポッコが悠々と散歩を楽しんでおり、風に流されて気ままな旅をするフワンテと、それを追いかけるオニスズメ。色とりどりのポケモンが織り成すコントラストにユニヴェルの目は奪われた。まあるいローズレッドの瞳はキラキラと輝いており、桜色に染まる頬がひどく愛らしい。
「ここで俯いて歩いてんのは勿体ないよ。せっかく色んなもんがあるんだから、もうちょい胸張って歩いてたほうがいい」
「あわ、は、はい!」
「じゃないと俺もやだし。どうせなら楽しそうにしててもらいたいじゃんね」
 ユニヴェルの顎から手を離したリバティは、けれど彼女を離すことなく。ゆるく抱きしめるような形をとりつつ、ことさら優しく話しかけた。
「で、今日はどこ行きたい? せっかく来てくれたんだし、行きたいとこ連れてってあげる」
 ここで――カバタで俺の知らないとこはないからね。
 未だ空に気を取られているユニヴェルの死角で。リバティは、意味深長に口角を上げていた。

伯吏さん宅ユニヴェルちゃんお借りしました。
20170319
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