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ずっと一番

 今日という日だけはせめて、一番にこの体温を感じたかった。
 エルフーンにも匹敵する柔らかなダブルベッドのうえ、天蓋の下で目を覚ますのもそろそろ慣れてきた頃だろうか。白いシーツに少しのカバタ織を織り交ぜて、どこかエキゾチックに彩られる室内はカディラシティの縮図のようでもある。花の香りに満たされた部屋で目を開けると、腕のなかには愛おしい寝顔があった。
 プラチナブロンドの淡い髪の毛、同じ色をまとう長いまつげの下にあるアメジストは未だ閉じられたまま。カナ、そう呼ぶと頬に影を落とすまつげがふるりと震えて麗しいウイスタリアの瞳があらわになる。寝起きゆえにとろりとした目元はひどく儚げでもあり、そして私が出会ったすべてのなかで、一番優しくもあり。
「……たんじょうびおめでと、アル」
 寝ぼけた言葉は蕩けていて、舌がまわりきっていないことがわかる。ふにゃりと笑うカナは私の胸元に顔を埋め、透き通った白磁の肌をゆっくりと擦り寄せてきた。さながらエネコを思わせる仕草に私の頬は情けないほど緩んでいるだろう。
「まずはおはようじゃないんですか」
「ありがとう」と言うより先にこんな言葉を吐いてしまう己が少し恨めしい。けれどカナに気にするような素振りはなく、ふふ、と小さな笑い声が聞こえてきた。可愛らしく震える肩を抱きしめれば彼女は再び顔を上げ、先ほどよりはいくらか覚醒したらしい表情で私のことを見つめてくる。
「だって、一番にお祝いしよう。って決めてたんだもの」
 ね、と微笑む顔は絵画のように美しく。けれど冷たさなど微塵もない、慈愛に満ちた笑みだった。
「……なかなか言うようになりましたね」
 今日はきっと、人生で一番の誕生日。そして来年もそのまた来年も「一番」を更新し続けてくれるはずだ。
 そんな、ひどく優しくてどこか泣きたくなるような幸せをくれるこの恋人のことが、私は何よりも好きなのである。

鈴城ゆきこさん宅カナタちゃんをお借りして。
4月2日、アルフレド(レグール)誕生日おめでとうございました
20170402
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