「へえ、今はシンタロウっていうんだ? 私とセックスしたときは、もっと違う名前だった気がするんだけどなあ」
かち。浅葱色に彩られた指先が、紅と白をまとうモンスターボールの、まあるい開閉スイッチを押す。赤い光のなかから姿を現したポケモン――フリージオが、射抜くように斜向かいの人物を睨めつける。
「シンタロウ」と呼ばれた隻眼の男は、くつくつと喉奥で笑った。
「随分と可愛げがなくなったもんだなあ、ミイ」
吐き捨てるような文句に嘲笑を返し、フリージオへ目配せする。
――目と目があわずにいたとしても、いつだってポケモンバトルは始まるのだ。