破壊衝動の漂う深海で | ナノ




 メフィストは自分自身が細やかだが嗜虐趣味を持ち合わせているのではないか、とよく考える。それはこうして燐を見下ろしている時に考える事が多い。例えば今の現状、燐の下半身は衣服はなく肌を晒して細い脚をふるりと震わす。上半身は制服のシャツを羽織っているが釦は最後の一つを残して外されて、白い素肌に残る赤い鬱血がよく映える。

 ふわりとした感触の座り心地も、手触りも良い椅子。それはメフィストのお気に入りの一つでそこに腰掛けていた、そのメフィストの瞳に宿るのは雄として熱、欲望。瞳はそれを雄弁に語っているがその態度自体は落ち着いたもので、椅子の上で足を組み燐を眺めているだけだ。燐はその下、色は真紅でふわふわと柔らかな絨毯の上で四つん這いになり、肩越しにメフィストを睨み付けていた。その額にはじわりと汗が滲んで、頬は仄かに赤く肩も上下を繰り返して息が荒い。

「どうかされましたか、燐君」

「抜け…よ、っこれ…っ」

 これ、と言いながら恥ずかしいのかおずおずと燐は腰を揺らす、纏う物もなく外気に晒された下肢、黒い尻尾だけがゆらゆらと揺れる。そして、その孔の奥から鈍い震動音と細い線が伸びて続く。いわゆる大人の玩具、ローターが燐の狭い孔に押し込められている訳だがそのピンク色はメフィストが作らせたオーダーメイドだ。よく似合う、と口許は歪な笑みで歪ませながら椅子に肘を乗せて頬杖をつく。

「自分で抜いてみたらいかがですかな」

「出来ね、…って、知って言ってん…だろ、っ」

 ええ、と飄々と頷けば燐の目付きは鋭くなり、キツくメフィストを睨み付けた。その表情に迫力など全くない、蒼い瞳は潤んでいるし赤く染まった頬ではただ煽るだけだ。出来ないと否定したのは当たり前の話だ、燐の両腕は黒の長いベルトで両腕をまとめてぐるぐるに巻かれていた。両肘を付いて上体を支え、ビクリと身体を震わせながらもどうにか背後のメフィストを見る。それが何ともいじらしく、メフィストの背筋を震わせた。

 ビクと時折燐の背筋が揺れる、腸内で蠢くローターとはいえ震動は差ほど強くない、かと言って無視出来る程には弱くもない。それが燐は焦れったくて仕方ないのだろう、訴える為に揺らした筈の腰はまだ緩々と揺れている。

「おや?駄目ですよ、そんなに物欲しそうに揺らしてはローターが落ちてしまう」

「え、…っあ、ああっ!」

 組んでいた足を伸ばしてメフィストの靴、先が反り返り尖ったブーツの靴先でぐっとピンクの玩具を中へ押し入れた。燐は掠れた一際高めな声をあげて、ビクンと背を弓形に反らした。上体の体勢は保てないのか、額を真っ赤な絨毯に擦りつけて拘束された掌はその絨毯を力の限りに鷲掴む。ビクビクと脚も震え、更に荒くなった呼気は室内によく響く。上体が沈んだ為に尻は上がり、メフィストの前に惜し気もなく晒す形となった。

「そこもそんなに垂らしては絨毯が汚れてしまいます」

「ん、んあ…あ、…っ」

 既に勃起している燐の性器、その先端は透明な液が滴りメフィストが靴で先端を軽く押し擦れば燐はビクリと跳ねて、掠れきった声で甘く鳴く。その口端からは唾液が零れて汚れるとメフィストが言った絨毯を濡らす、メフィストが靴を擦り付けた途端に足幅を広げた事を燐は自覚しているのだろうか。震える脚は変わらず、たが靴を動かさずにいれば燐自身から腰を揺らしてくちゅくちゅと濡れた亀頭を擦り付ける。ビクビクと震え、嫌だと首を左右に振っているのがメフィストにはよく見えた。

 快楽に従順な自身の身体を憎く思っているのだろう、こういう行為に及べば燐の心と身体はバラバラになる。身体は快楽を、心は矜持を、違ったモノを求めてそれが叶わずに燐は嫌だと泣くのだ。けれどメフィストは燐のそれが堪らなく好きだった、壊れる寸前の燐が愛しく一気に突き落としたくなる。

「何ですか?私の靴にイカせて貰おうとしているのですか。はしたない、それでは私の靴がべとべとになるでしょう」

「あっ、っ、や…だ…ッ!違う、…っあ、」

「違いませんよ、既に私の靴は貴方の汁でぐちゃぐちゃです。そんなに玩具はおきに召しましたか?」

 だからメフィストはこうして態と自覚させる。それだけで燐は黒髪を激しく揺らしてブンブンと勢いよく首は振るも腰を揺らす動きは大胆になる。メフィストに見えないが蒼い瞳は涙が溢れ、垂れ下がった眉は見るものに嗜虐心を誘う。はっはっと息を吐きながらも燐は崩れそうな感覚に耐えるようにぎゅと絨毯を強く握り締めた。その様は壊れそうな薄い硝子を前にしているようで、メフィストはゾクゾクと背筋が粟立つの止められない。口角も吊り上がり、欲求も高まる。だがメフィストは手を伸ばしたくなる衝動をどうにか押し殺す。

「う、あっ…メフィ…スト、…っ」

「…はい?」

 メフィストは平静な声を装い答える、ガクガクと四肢を震わせながらも上体を起こして肩越しに振り返る。その際にだらりと床に投げ出された尻尾がするりとメフィストの足首に絡まる。

「頼、む…っいやだ、このままじゃ、あ…っ苦し、い…っ!」

「それではどうしたらいいのか解りかねますね。……燐君」

「ひっ、…く、もっと、気持ち良く、……気持ちよく、なり、ったい」

 この燐が堕ちる瞬間が堪らない、そう歓喜してしまう感情、悪魔なのだから仕方ないのだが相当性格の歪んでいるとメフィストは自覚するしかない。やはり愛する相手には同じ位置まで堕ちて欲しい、最初から上がろうとは考えない所は種族的な問題だ。唇をぺろりと舐め上げて、椅子から立ち上がる。背後に立てばコードを掴みずるりと引く、震動を続けるピンク色の頭が見える。そのまま一気に玩具を引き抜くとひっと艶っぽい矯声を燐が漏らしピンと背を反らした、繊維が裂ける音が聞こえる程に絨毯を握り締めた指先はピクリと跳ねる。透明な糸を引きながらピンク色の楕円形が姿を表すとひょいと床へと投げ捨てた。

 粘着性に伸びた透明な糸は収める際に塗り付けたローション、それが太股迄滴り、肌を伝っている。これなら改めて濡らす必要もないと判断すればメフィストはその細腰に手を添えて、既に硬度を持ち質量も増した自身の雄を宛がう。後孔の皴をなぞり亀頭を数回擦り付けてやる、すると最後の抵抗なのか一瞬逃げる様に燐が腰が引くも今更メフィストが許す訳もない。添えていた手で腰を押さえつけて、ぐっと前へ腰を進めた。

「あ、うっ…入る、…っひ、入って、くる…っ!」

 ぐちゅと騒がしい水音が鳴るも思ったよりすんなりと中へ反り勃つ性器が収まる。それでも根元迄一気に埋めればきゅうきゅうと中は締め付け、人肌よりも温かい内壁は極上。それにメフィストがすんなりでも燐はブルブルと身体を震わせて、上体は崩れて額を絨毯に擦り付け悲鳴に近い声で呻く。この真紅の絨毯の上で、メフィストから見ればまだまだ幼い肢体を獣の様に背後から押し付けて、今から悦いように貪る、そう思うだけでメフィストの喉がこくりと鳴った。そして、ずるっと内壁を捲り上げるように引き抜くと再度奥まで押し込めて律動を開始した。

「ひあ、…あっあ、あ!」

「っ、ほら、燐君、…これでもう苦しくないでしょう?」

「んんっ、あ、う…っ、ひ、気持ちいい、…い、い、っ!」

 ぐちゃ、ぐちゅと水音を煩くしながら容赦なく腰をぶつけて揺さぶる。そうすると崩れた上体が持ち直す事なく下肢だけが残り、尻を突き出す形になり更に深い所まで熱いモノが届く。蒼い瞳は蕩けて、焦点はない。ただ悦さそうなその顔に苦しみはなく、時折ぎゅと瞼を閉じて床に涙を散らす。メフィストは額にじわりと汗を滲ませ始めながらくつくつ喉奥を鳴らして笑う、燐は壊れてしまったらしい、と言ってもそれはこの情事の間だけだ。これが終われば眩しく笑うのだろう、少しメフィストには眩しく映るあの笑顔で。

「…もっと、締めて頂けませんか?」

「んー…んっ、…ひっ、…や、あっ!」

 脳内に浮かぶ笑顔が気に入らず苛立ち混じりにパシンと掌で尻を叩く、そうするとビクッと身体が跳ねる。そしてきゅうと一際強く内壁が収縮して、メフィストは眉を顰めて瞳を眇る。同時に漏らした燐の声には甘さを帯びており、ここまでくると痛さも悦いらしいとメフィストは知る。これは愉しい発見だと上機嫌になりながらも、強く叩いて赤く染まった尻を掌で優しく撫でた。燐は絨毯に爪を立て、黒髪をパサパサと揺らして力無く首を振る、どうやら燐はこれ以上は無理だと訴えているのだとメフィストには分かった。

 額を汗に滲む燐の背に擦り付けてのし掛かる、両掌は絨毯の上。メフィストが上から重みを掛ければもはや震えて力の入らない四肢で耐え切れず体勢は崩れた、尻だけが持ち上がり後は絨毯に伏せるような姿。そうするとガツガツと内壁を抉るように腰を揺さぶり、突き上げる。

「ひ、…っふ、あ…うあっ、あ、あっ!じゅ…絨毯に、…っ!」

「っ、は…、」

 幾分か下がった腰では燐の性器の先端が擦れて、摩擦を生む。それだけで焦らされていた燐の身体は快楽に飢えていたせいか気持ちがいい。もっと速く擦れるようにと腰を揺する、それは獣の交尾のように乱雑に腰を叩き付けるメフィストの動きに合わせて揺れた。尻尾の先までビクビクと震え、メフィストのされるが侭に肢体は揺れて掠れた鳴き声は大きく、よく室内に響いて返る。開いた唇から唾液が滴り顎に伝い落ちる、その酷く暴力的とまでいえる律動に燐は喉を反らした。

「ひ、…あっ、あっ、あ!…やだ、壊れ、る…むり、っああっ、っ!」

「…ッ、本当に、壊れてしまえ、ばっ」

 ぽろりとメフィストの本音が零れて落ちる、けれど燐にはそれに耳を傾ける余裕はなくただの独り言として消えた。それでいい、メフィストはふっと満足した、グチャグチャとローションと体液の混じった淫靡な音を鳴らす中、その内壁のごりっとしこりを亀頭で押し潰し、突く。それだけで燐の丸まった尻尾はピンと伸びて、足の爪先をきゅと丸めてブルブルと震える。

「い、く…っ、メフィ…っ、じゅ、…たんっ、…汚し…あ、ああ、あっ!」

「っく、キツ…っ」

 きゅうと絞り取ろうとする内壁の収縮にメフィストの顔に余裕なく、息を荒くさせて眉を顰めて絨毯に爪を立てる。同じく爪先が白くなるまで絨毯に爪を立てた燐は悲鳴を上げた後は声にならないのかパクパクと魚のように口を開いて身体を震わせていた。

そしてその中に遠慮なくメフィストの意味のない精をごぷりと注ぎ込めばビクンと身体を波打たせた。既に燐が吐き出した真っ赤な絨毯に真っ白などろりとした液、そこに燐の中から溢れた精液が混じれば今日も一つ、燐を壊したという実感が湧いてメフィストはそっと笑みを浮かべた。









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