羞恥もまた快楽 | ナノ




 趣味の悪いピンク色のキングサイズのベッドが一つ。その上に四肢を投げ出している燐だが、目許に制服のネクタイが巻かれていた。

「っ、はあ、うあっ!メフィ、や、だっ奥、もっと…っ」

 燐の呼気は乱れ、頬は仄かに赤く染まっておりその身を捩る。しかしそれも大きくは動けない、中に埋まる熱がそれを許さないのだ。激しく中を掻き回されては強い快楽がぐずぐずに脳を溶かして、薄く開いた口端からはツゥと唾液が溢れていく。メフィストに纏めて掴まれている手首の箇所がじわりと汗ばむ。

「もっと、ゆっくり、…がいいのですか?」

 がくがくと揺すぶられる状態でどうにか首を上下に揺らすも燐には実際に揺らせているのかわからない。視界を奪われている今、燐に把握出来る事は限られている。

 更に騒がしい程の粘着質なグチョグチョと室内に響いてそれが聴覚さえも塞ぎ、ただ自分とメフィストの行為だけを音で語る。燐は爪先の指を丸めて、何かにつかまりたくてメフィストの腰に開いた両脚をすがる様に巻き付けた。

「あ、あっ!ゆっ、くりっ、俺もう、わかんなく、なるっ」

 絶え絶えにどうにか言葉を紡ぐ。燐は性技に手慣れている訳ではない、年齢的には仕方がないのだがメフィストを自分で満足させているのか不安なのだ。現に何時も今のように与えられる快楽に溺れ、行為が終われば言った事さえもうろ覚えなのが実状であった。それ程にメフィストと肌を重ねるのは悦い、そして麻薬のようで恐ろしい。

 もしメフィストと付き合う自分に会えば、あいつとセックスだけはするなと声を大きくして言いたいと燐は思っている位だった。とはいえ燐自身も全てを後悔している訳ではないのだけれど。

「っ、私を、満足させたいとおっしゃるのですか?」

 行為に及ぶ前に燐はメフィストにその不安をぶつけていた。そしてメフィストは言ったのだ、でしたらご自身の目で満足されていないか確かめてみたら如何でしょう、と。だというのに目は塞がれて、そのチャンスさえ与えられていない。
 余計な事を考えるな、とばかりに乱暴に前立腺を突き上げられては弓なりに背を反らして甲高い悲鳴で鳴く。

「ああ、っ、メフィ、ストぉ…っ」

「…仕方がありませんね」

 それでもどうにか首を振れば、溜め息混じりの声と共に突如暗い闇に光が差し込む。燐はそれが目隠しを外された為だとわかると瞳を眇めつつ、恐る恐る開く。

 最初に飛び込んできたのは、メフィストの顔。その口許に浮かぶ歪な笑みだった。それにぞわりと背筋が粟立つも、次に燐の瞳が写したのは何処か怯えた自分自身の姿だった。

「何だ、っこれ」

「鏡ですよ、貴方に自信が無いようでしたから是非自分自身で見て頂こうと用意しました」

 天井にあるのは、鏡。天井だけではなく四方八方の壁は鏡に変わっていた。何時の間にと問う余裕は燐には無かった、その鏡に映る淫蕩な姿の自分自身。限界まで広げられた穴はしっかりと性器を受け入れ、ひくりと時折やらしく震えている。
 脱がされ脚に引っ掛かる制服のズボン、上体の制服ははだけて白い素肌や鎖骨には赤い鬱血の痕がそこらに刻まれていた。

「おま、これ、っあああ…!はっ、動くなあ、やめ、っ」

「ちゃんと、っ、その目で確かめて、下さいね」

 止まっていた律動が開始されればぐちょりと再び室内が騒がしくなる、そして広がる穴が収縮しながら易々と性器を受け入れるのが見えるのだ。僅かに泡立ちながらも受け入れる様に羞恥を感じられずにはいられない。

「うあ、待て…、っ、ひあ、あっ!」

 けれどその羞恥に支配されている間も長くはなく、中を容赦なく掻き回されては快楽に思考が鈍っていく。天井から瞳を反らして横を向くも四方にある鏡はそれを許す事なく燐の恥態を晒していく。

「あ、あっ、はあ、ん」

「ほら、貴方はこんなにっ、蠱惑的だ。…私が始めての相手だと思えない程に淫乱、ですよ」

 自分の意思と関係なく揺れる腰はメフィストの動きに合わせて、メフィストの腰に絡めた足は甘えるように擦り寄る。溶けそうな脳の端では認めたくなくて、忌々しい道化師を睨み付けてやるもメフィストは欲を乗せた瞳は笑わずに口許だけは綺麗な笑みを作ってみせた。

「…燐が望んだのでしょう?」

 そう嘲笑いながら鎖骨や咽に太股、至るところに牙を立てていく。ひっと喉をひきつらせ悲鳴を上げる、そしてそれを天井の鏡から眺めれば獲物を食い漁る嬉々とした白い獣が一匹。
 仕方がないなどよくも言ったものだと呆れた最後の理性を燐は手放した。


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恥もまた快に消た。

(そのしなやかな肢体を快楽に震わせて)

Thanks<空想アリア






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