強欲 | ナノ



 自分は温厚な方だとアマイモンは思う。父であるサタンは理由のない殺戮なんて数え切れない程しているし、兄であるメフィストは大昔だが神と賭けをして、ある意味神に喧嘩を売っている。それらを考えると自分はなんて温厚なのだろうと、アマイモンは再認識した。

「もしそれで温厚だ、なんて答えたヤツがいたらそいつを俺がぶん殴ってやる」

 苛立った声の方向へ瞳を動かすと獣のように彼自身が眠るベットの上で四つん這い、首には真っ黒なベルトに棘のついた首輪。そしてその姿でキツく見上げる燐の姿があった。
 燐の返答からしてどうやらアマイモンは思いを知らず知らずに口にしていたのだ気付く。

「そうですね。他の事なんて考えてすみませんでした」

「いや、謝る所がちが、あああ、っ!」

 腰を掴み、ぐっと奥へと中を強引に抉れば既に繋がった箇所からはぐちゅりと水音が立つ。びくびくと燐の肢体が震えて色気の含む甘い声が室内に大きく響いた。
 腸内は熱く、締まりはキツ過ぎるが性行に慣れてないソレが自分だけのモノという征服感を満たしアマイモンには心地好い。

「っ、すごく似合ってるなあ」

 突如襲った感覚を逃そうとしているのか燐は肩を上下させ、乱れた息を整えている。その隙に首輪を人差し指でゆったり撫でる、これはアマイモンが燐に着けたものだ。
 ベヒモスに着けている首輪と同じ種類でちゃんと鎖も繋げてある。もちろん燐は嫌がったがアマイモンの押しに勝てる事はなかった。

「何が、っ…温厚だ、よ、ひっ」

「ボクは温厚、ですよ」

 息を整えたのか肩越しに振り返った燐の頬は赤く、瞳には潤いが残る。むくりと自身に沸いた欲をアマイモンは堪える事なく、乱暴に抽送を始めた。
 それは段階を踏むのでなく、最初から先端で抉るように前立腺を突く。ぐちゅぐちゅと騒がしい水音に混じり肌のぶつかる音がその激しさを物語る。

「やだ、やめっ、…ん、あっ、あっ!激しく、すんな、うあっ」

 身体を支える両腕はがくがくと震え始め、燐は体勢を保ってられずにがくりと腕が崩れてシーツに額を押し当てる。自然とシーツに擦り寄る形になるのだがアマイモンはそれが気に入らない。
性器を包む溶けるような熱さに余裕がない為か、生来の気質か。アマイモンは首輪に繋がる鎖を掴んで遠慮せずに強く後ろへ引いた。

「ぐっ、ひああ、っ!」

「…っあ、…アハハ、燐はやらしいです。首を締められて中がきゅうって締まった」

 鎖に引かれ背が反り、締まる首輪に燐の顔に浮かぶ苦し気な表情や顰められた眉。けれど瞳の奥にはアマイモンと繰り返した性行のせいだろう、喜悦な色が見えていた。痛みも苦しみも、快楽へと変換されてしまう程にこういう手荒な行為を繰り返した結果だ。

 これで温厚など、どの口が言うのだと燐は内心腹立たしかったのだが。

 そんな怒りを知ってか知らずか、アマイモンは鎖を手指に絡めてから燐がベットに倒れないよう手首を掴んで引くと言葉を繋げていく。

「だってボクは、物質界も、…っ神も戦争も興味ありません」

 もし父であるサタンに物質界を奪う戦いを始めるとしてもアマイモンは参加しないだろうと確信していた。今はただこの末の弟を連れて出来る事なら虚無界で静かに愛でる事が出来たらそれでいい。

 じわりと背に滲む汗を感じて、摩擦と締め付けの気持ち良さに腰に添えていた指先に力が入る。鋭い爪先は燐の肌に埋まり、赤く血を滲ませた。しかし、燐はそれにさえ甘く鳴くともはや言葉も耳に届いていないのか、悦楽に溺れシーツをぎゅうと握り締めては四肢を震わせる。

「あ、っああ、…イク、出るっ、アマイ、モン…ああっ!」

「っ、はい、ボクも、っ」

 嫌々と首を左右に振り、子供がすがるよう何度も繰り返し名を呼ばれるとぞくぞくと背筋が粟立つ。行為が終われば乱暴だ、強引だと怒る燐。だがそれを誘導しているのは燐だというのにアマイモンには少々理不尽に感じる。
 質量の増した熱が穴を広げて、感度も強くなる。最奥を突けば燐は甲高い悲鳴に近い喘ぎ声をあげて脚をがくがくと痙攣させ、勢いよく熱い精液をシーツに散らしていった。それに遅れてアマイモンが腸内へと精液を注ぎ込めば、その快楽に酔い自分より多く汗の滲む燐の背に額を擦りよせた。

 どくどくと頭の奥で聞こえるような脈動音を聞きながら自分の担う罪をアマイモンは強く自覚していた。そして、この罪が途端に愛しくなって仕方がなかった。



 

Avaritia




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