いただきます | ナノ



「がぶり」

 アマイモンはわざわざ効果音を口にしながら噛み付いた。

 それが燐の指先なのだから噛まれた本人である燐は堪ったものじゃない。この悪魔は何時だって容赦がない、今だって力強く噛まれたせいか皮は裂け赤い血がじわじわと溢れでている、お陰で人差し指の先はじくじくと痛み、そして小さなルビーが飾られた。

「っ、てえ。何しやがるっ」

「噛みました。」

 当たり前な事を、とばかりに答える様が憎々しい。因みにここは雪男と燐の自室であってアマイモンが平然と居ていい場所ではない、更に言えば不法侵入なのだがこの悪魔には何を言っても無駄な気がして燐はもはや何も言わない。

「指先から血が出ていますね」

「…お前に噛まれたからな」

 じーっと興味津々と眺めるアマイモンにはあ、と呆れたと溜め息を吐き出して燐も玉になった血の塊を見下ろす。既に血は止まって傷も塞がっているようだった、その次に燐の視界に入るのは舌。アマイモンの舌だ。

「おまえ、っ」

 ぴちゃ、と赤い舌がルビーを掬う。それがなくなっても生暖かい舌は離れず何度も何度も、消えた傷痕をぬるりと探る。そして再度、その指先に歯を立てた。

 びくりと燐の肩が震え、また指先の皮が裂けて血が溢れていく。アマイモンはそれが甘露だとばかりに丁寧に、優しく舐めつくす。

「おい、やめろ、っ、て。」

 鋭い痛みから優しい愛撫、その変化に燐の背筋がぞくぞくと粟立つ。
 すると、アマイモンは突如指から唇を離した。その唇からツゥと引く細い唾液の糸を見るだけで燐の頬は熱くなる。

「不思議と燐の血は美味しいです、他も噛んでみたいです」

 無表情に近い中で瞳だけは爛々に輝いてみえるのは気のせいだろうか。それでもイヤとは言う気にならないのは何故か、燐は解りきった答えは投げて、ただ好きにすりゃいいだろと小さく投げやりに呟いた。

 


ただきます




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