◎豪鬼



さよならするのは、俺からじゃないと駄目だと、思っていた。
いつまでもこの関係は続けられない。
彼は男で、俺もれっきとした男。
解っていたけど、それでも傍に居たかった。

でも、このままじゃ、駄目になる。
彼の全てが欲しい。そんな俺の感情は、彼を潰してしまう。
彼の、まだ長い先の人生を潰してしまう。
それだけは、何が何でも嫌だった。


だから。


「…もう、終わりにしようか。」

俺の気持ちで、貴方を苦しめてしまう前に。
大好きな貴方の、今後の人生を壊してしまう前に。



涙は出なかった。
この言葉を言うまで、散々悩んで苦しんで、泣いてきた。
だから、想像していたよりもあっさりと、言えた。

目の前で笑っていた貴方は、すぐに眉間に皺を寄せて、真剣な眼差し。
そんなに、見つめないで欲しい。
俺の決意は脆くないけど、でも、強くない。
大好きだから、そんな目で見つめられたら、求められたら、崩れてしまう。「冗談だ」って、言ってしまいたくなる。(本当は、言いたい)(でも、言えない)


お願いだから。
何も聞かないで、ただ一言、「解った」って言って欲しい。

お願いだから。
その綺麗な瞳から俺の姿を消して。
そしたら、俺も。(、なんて、本当はそんな簡単に出来っこない)

諦めなきゃいけない。
そんなの、解ってる。(だって、君を潰してしまう)
諦められない。
そんなの、当たり前。(だって、こんなにも好きだ)


自分の気持ちと君の人生。
そんな天秤、どちらが重いかなんて測るまでもない。(君の人生は、何よりも重い、)


ぼやけた視界に映る君は、とても綺麗で。(俺の大好きな、君)
本当は今すぐ抱きしめて「ずっと傍にいて欲しい」と言いたい。(絶対言えない、)


「……俺の人生は、」

彼が難しい顔をしたまま、でも、優しく言葉を紡ぐ。

「鬼道の人生と同じ。」

皆、人生の重さは同じ。
だから、秤にかける対象としては不釣合いだ。

「俺も、鬼道の人生、めちゃくちゃにするかもしれない。」
でも、それでも、一緒にいたい。


―俺が鬼道の人生壊したら、俺の人生も壊せ。
―ずっと一緒にいれば、壊れても怖くない。


ああ、この人は。
自分の人生を賭けて俺の傍にいると言ってくれた。
賭けてるのは自分の人生だけでなく俺の人生もだと、言ってくれた。

そうだ。
壊れる時は一緒。

でも、豪炎寺と一緒なら、怖くない。


ありがとう。
これからも、よろしくおねがいします。


サヨナラ


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