@豪鬼


豪炎寺は屋上が好きだ。


考え事がある時や、落ち着きたい時は必ず屋上に足を運ぶのを、俺は知ってる。だから必然的に俺も屋上に足を運ぶ機会が増えた。


「豪炎寺。今日はどうしたんだ?」


屋上で見つけたその背中は、何故だか儚くて。消えてしまいそうになるのを引き止めるように声をかけた。

ゆっくりと振り向いた顔は、想像していたよりも凛としていて。俺の姿を見とめるとふっと笑った。


「雪が、降り始めたから。」


そう言うと、視線を上げて空を仰いだ。
あぁ、さっき円堂たちが騒いでたっけ。初雪だー!って。
そんなことを思い出しながら、でも雪を見るでもなく、俺は目の前で空を見上げる豪炎寺を見ていた。

消えてしまいそうだと思ったのはきっと、雪のせい。
愛しいものを見るような、柔らかい雰囲気の豪炎寺が雪に溶けてしまいそうに見えたから。


「豪炎寺?」


ぽつりと。
愛しい人の名を。


雪が一人占めしていた視線を無理矢理奪い取って。こちらを振り向いた豪炎寺に、笑みがこぼれた。



俺は意外と独占欲が強いのかもしれない。

らしくない自分に自嘲すると、豪炎寺の冷たくなった左手をそっと握った。
「寒いだろ?」なんて、隣で驚いてる豪炎寺に囁いて、あたかも自然に。


ただ、どこかで君の体温を感じたかったんだ。なんて言ったら豪炎寺はどんな反応をするんだろう。
こんな子供みたいな欲求に、君は躊躇うことなく答えてくれて。


今までの自分からは想像も出来ない、らしくない自分が可笑しくて、でもそんな自分が嫌いじゃなくて。
寧ろ居心地がいい、
そんなことを思ってる自分が、

前よりちょっと好きになった。




らしくない。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -