@豪→鬼


俺は卑怯だ。

鬼道がボロボロになってるところにつけこんで、あたかもいい人ぶって。


鬼道が俺を頼ればいい。
鬼道が俺なしじゃいられなくなればいい。

鬼道が俺を好きになればいい。
鬼道が、俺のものになればいい。


本気でそう思ったんだ。



誰も想像しなかった状況を目の当たりにして立ちつくす鬼道、その視線の先には倒れた帝国学園のレギュラー陣。

あれから鬼道は自分を責め続けて、サッカーも夢も仲間も、全てを失ったように見えた。

自分を蔑むように笑った顔が、泣いているように、見えた。



この時、俺は不謹慎にも思ったんだ。


『鬼道を手に入れるには今しかない』


直感、っていうかなんていうか、心の中で誰かが囁いたような感覚。
今まで我慢していた気持ちが一気に溢れだして、その日の夜、
悲痛な顔をして今にも泣きだしそうな鬼道の気持ちにつけこんだ。


俺はここにいる。
鬼道の傍にずっといる、って。

いつもなら眉間に皺を寄せて馬鹿なことを、と流されるだろう言葉も、その日の鬼道には救いにしかならなくて。

俺は卑怯だと解っていながら、腕の中で震えながら声も出さずに泣き出した鬼道を掻き抱いた。


どんな卑怯な手を使っても、手に入れたかったんだ。


こんなにも卑怯な俺だけど、俺のこと、好きになれよ。

俺のものになって。


絶対悲しい思いなんかさせないから。

ずっと一緒にいるから。
俺はずっと、鬼道の傍にいるから。




卑怯だと言われようとも


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