@円鬼


良く晴れた日。
空を見上げれば雲一つない澄んだ青がそこにあって、光が優しく降り注ぐ。


午前中の授業が終わってざわめく昼休み。
昼ご飯を食べ終った俺はぼんやりと窓の外を見つめていた。
空の青と赤い太陽、緑の芝生のコントラストを、ただ単純に綺麗だと見とれていた。

すると、同じくご飯を食べ終った円堂がパックのイチゴミルクを飲みながら目の前を陣取った。
見とれていた先をふいに遮られてちょっと残念に思ったものの、にこにこ笑う円堂を見るとただ溜め息しか出てこない。

はぁ、と息を吐くと円堂は口からストローを離して「はいっ!」と勢いよく手を伸ばした。


目の前に差し出されたイチゴミルク。

一瞬きょとん、として次いでどうしたものかと首を傾げて頭を悩ませた。

と、悩んでいるうちに半ば無理矢理手に押し付けられて、慌てて返そうとしたら今度は逆の手を取られてしまった。


右手にイチゴミルク、左手に円堂の手。

ますます訳が解らなくて軽くパニックな俺に構うことなく円堂は「鬼道に俺のお気に入りの場所教えてやる!」と嬉しそうに歩き出した。

何で急に、なんて思いつつも、理解不能な行動はいつものことで。
一度言い出したら聞かない円堂に連れられて中庭に足を運ぶことになったのである。


「ここ、ここ!お気に入り!」


中庭の端にある木の下。
木の幹を背もたれにして芝生の上に嬉しそうに腰を降ろす円堂を見て、ゆっくりと隣に腰を降ろした。

ここから見る景色は、さっき見とれていた景色よりも綺麗だった。
日の光も、柔らかい風も、暖かい空気も、優しい緑も。
自然と心が暖かくなるのを感じ、円堂にお礼でも言おうかと視線を横に移動させた時。

ぱたりと倒れこむように寝転んだ円堂に動きがぴたりと止まる。
僅かな重みを感じつつ、俺の足の上にある見慣れたオレンジのバンダナ頭を一瞬見つめて。
慌てて「円堂っ!?」と声を発したが円堂は気持ち良さそうにとろんとした顔で「鬼道の匂い〜♪」と上機嫌。
なんだか怒るに怒れなくて、困ったように眉根を寄せるのだった。

しばらくして円堂の静かな寝息が聞こえてきた。
全く、と息を吐きながらふと視線を落とすと目に入ったもの。


右手に持ったままだったイチゴミルク。

円堂を起こさないようにとゆっくりした動作でストローに口をつけた。


「…甘い」


ぽつりと呟いて、もう一度寝ている円堂に視線を落とす。


幸せそうな円堂の顔を見ながら、静かに目を閉じた。




いちごみるく


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