「ねぇ、」

「…あ゛ぁ?」


隣で剣の手入れをしていた指を見ていたら無性に触りたくてたまらなくなったの。

すき、と言って髪に触れたら、その銀髪はキラリと光を吸い込んで光った。


「さっきからずーっとそればっか…私より剣が大事なの?」

「なぁに言ってんだぁ?」


怪訝な顔を向けたスクアーロをじとー、と見つめていると、やがて

…そんなわけねぇだろぉ、と小さく聞こえた。

彼を見たら、ちょっと目を泳がせて、それから少しの咳払い。
横顔がほんのちょっぴり赤くなってて、それだけなのにあたしのスイッチは容易く切り替わってしまった。


「スクアーロ」


来て、とあたしが両手を広げて向き直ったら、それは抱っこしての合図。
あなたはしょうがねぇなぁ…なんて言いながら、渋々してやるぜ的な態度をとってるつもりだろうけど、ダメダメ、バレバレ。
あたしには分かるよ、本当は嬉しいくせに。


ちゅ、と軽いリップ音をたててスクアーロの唇が耳たぶを刺激するから、思わず背中から腰の辺りがゾクリと震えた。

女は男より性欲が弱いだなんて誰が決めたんだろうね。
自分から求めたりするのは恥ずかしいとか、はしたないとか、そんなのは全然おかしいと思う。

もし万が一、セックスの嫌いな女ばかりになってしまったら、この世は終わってしまうのに。
例えば赤ちゃんができたとしたって、大変なのは女のほうでしょ?

リスクを背負う分、いい思いをするべきなのも女だと思うの。


「だから、ね?」


さらさらの銀髪を少し避けて首に腕を回して、案外細めの腰を両足で挟んで。
ぴったりと密着したら、お尻の辺りに当たる感触が膨張してムズムズと欲情してくる。

はやくほしいって思う気持ちと、もっとじらしてって気持ちが大葛藤、あたしはこの始まる前の空気がすきだ。


「見つめ合うだけでこんなにドキドキする人は、スクアーロが初めてだよ」


熱っぽい眼差し、薄い唇、白い肌。
どこをとってもあたしの欲を煽ってくる。


「…他の男と比奈が見つめ合うとこなんか想像させんなぁ」

「じゃあ…スクアーロが最後になってよ」


他の人も過去だって全部忘れて消えてしまってもかまわない。

だから早く。


「明日の任務はベルの野郎にでも押しつけるかぁ」


軋むソファ、たゆたう銀髪。

一度入ったスイッチは、もう切り方が分からないの。






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