Immoral Baby | ナノ
「え、レギュラー落ち?」

テニス部のコートが見える3階の廊下で下校前の女子トーク。
昨日の不二くんカッコ良かった!ってはしゃいでいる友人の話を聞いていて、そういえば同じクラスの乾くんもテニス部だったっけ?と思いだして何となく聞いてみた。
毎月行われるテニス部の名物、校内ランキング戦。今回のランキング戦は都大会出場メンバーになるので始まる前から新聞部とかも注目してた。なんかテニス雑誌の記者の人も来てたらしいし。

「そうそう、私不二くん見てたから乾の試合は見てないけど。2年のバンダナの子と、1年生に負けたらしいよ」
「えー?結構屈辱じゃんそれ」

乾くんがテニス部内でどれだけ強いのかは知らないけど、下級生に負けるのは悔しそうだなと思った。私はスポーツやらないからその悔しさは分からないし、そもそも本当に悔しいのかも知らないけど。
そう思いながら乾くんを思い浮かべる。そして気付いてしまった。

「乾くんって背高くてガタイ良いよねぇ……あーでもちょっと細身すぎるかなぁ」
「なに、今度は乾?」
「もう少し厚みがある方が好みだけど…ちょっと仕掛けてみようかな?別に嫌いじゃないし、アタリだったらラッキーくらいで」
「程々にしとかないとさー、そろそろ大っぴらに噂立つよ」
「んん、そんな手当たり次第やってないもん。私結構一途だよ」

若干呆れ顔の友人の言葉を軽く返して、明日早速行動してみようと思いつつコートを見下ろした。
パコンッと爽快な音を立ててボールを打ち返しているレギュラー陣の側で、緑の学校ジャージを着た乾くんが見えた。
どんな気持ちでソレを着ているのか、さっきまで乾くんはどんな気持ちだったんだろうと考えていたのに、私の頭は明日起こるであろう不純な光景への期待で埋まっていた。


2018.01