ずんだと忍びと老成剛毅 |
ずっ、という音を立てて湯呑の中身は空になった。 隣には自分が作ったずんだ餅を美味そうに食べる北条氏政がのんびりと座っている。 その様子を横目に見ながら政宗はのどか過ぎる雰囲気に数度瞬いた。 (のどかだ) 素直な感情を心の中で呟き、空になってしまった湯呑を傍へ置いた。 すると目の前に宵闇色の羽が舞って、寡黙な伝説の忍びが姿を現す。 それはもう慣れたことだった。 「Hey, 茶ならいいからお前も食わねェか?」 この登場はおかわりの為だと心得ている政宗がちょいちょいと手招きすると、風魔は戸惑う様に僅かに首を傾げた。 「ちっと作り過ぎちまってな。手伝ってくれるとありがたいんだが」 「………………………」 沈黙の後、僅かに躊躇しているような常にない進行速度で(いつもは瞬き一つで移動できる距離だ)近くへ寄って来た風魔に一皿分ずんだ餅を見せる。 興味があるのか、じっと見つめているようだ。 「なあじーさん。こいつ甘いものとか平気か?」 「風魔は特に好き嫌いはないぞ。それにこれはくどい甘さではない故、得意でない者でも食せるじゃろ」 何気に気に入っている氏政はまたひとつ皿に盛り付けていた。 その様子に政宗は「喉に餅詰まらせんなよ」と注意を促しながら視線を風魔へ戻す。 無言で皿を差し出してみると、風魔は両手で皿を受け取った。 ついでに隣をたたいて座れよと言えば、素直に従う。 その様子に気を良くした政宗は小さく笑んでゆったりと流れる時間に身を委ねた。 こんな日もたまにはいい (もぐもぐ) (美味いか?風魔) (こくこく) (ふぉっふぉっ。風魔が頷くのも分かる。伊達の倅!もう一皿くれるかの?) (マジで喉に詰まらせんなよ、じーさん?) 藍紫さまへ相互記念 ← |