付かず離れず


元就×伊達←元親


長曾我部元親は独り静かに酒を飲んでいた。
図上では嘲笑うかのような三日月がその存在を主張して、僅かな光を注いでいる。
またぐいと酒を流し込んだ元親はふうと息を吐いた。

月を見ていると奥州の竜を思い出す。
そう内心呟いて徳利を傍へ置いた。

「………なんだかなぁ」

呟いてはまた空を仰ぐ。
変わらずに月は笑っていた。

独眼竜を思い描くと、何故か分からないが安芸の緑色が一緒に思い浮かぶ。
人を見下したような能面の顔が思い浮かんで元親は僅かに眉を寄せた。

「なんであいつら仲がいいのかねえ」

部下に対する扱いは真逆。
気性は似ている所もあるが、冷め過ぎている元就であるために政宗は沸点が低いと感じられる。
似ているようで似ていない。
似ていないのにあのふたりは何故か共にいる時間が増えて来ているのだ。
仲がいい、というのは語弊があるかもしれないが。

二人が出会った原因の様な自分は、正直あの状態に歯痒く思っていた。
あの二人が互いをどう思っているのかは知らないが、政宗に対しての自分の気持ちに気が付かないほど元親は鈍くはない。
だがお人よしのきらいがある元親はそれを告げる気にもならず、ただ眺めているのだ。
月と太陽を。

「……女々しいねえ」

己をそう言って己で笑う。
そうしていると、月に雲が掛かった。

「……同じ月でもあいつの月は翳(かげ)らねえのにな」

言って、自分の言葉に驚く。
そして心底可笑しくなってきた元親は声を挙げて笑った。

「見守ってやろうじゃねえか」

近づきすぎず、そうかといって離れもしないで、一定の距離を保ちながら関係を続ける月と太陽。
さしずめ自分は気紛れに月を隠すあの雲か?と元親は不意に思った。

どこかのお祭り男ではないが、恋に障害は付き物だ。
多少の邪魔くらい良いだろうと決めると、元親は立ち上がって部屋へと戻る。
肩に引っかけた紫がゆらりゆらりとゆれていた。

「明日あたり毛利を誘って政宗のとこに遊びに行くか」

楽しそうに呟いた。





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